◎繁華街の防犯対策 カメラ拡大ためらわずに
全国で相次ぐ通り魔事件を受け、金沢市と県警がJR金沢駅や武蔵地区で防犯カメラ設
置の検討に乗り出すのは当然の対応である。
東京・秋葉原の無差別殺傷事件のように、逃走を企てない自暴自棄な犯罪では抑止効果
は乏しいかもしれないが、通り魔が逃走したケースでは防犯カメラが容疑者特定の決め手になった事件はいくつもある。ひったくりや変質者などの路上犯罪に対する抑止効果は、片町などの先行事例をみれば明らかである。
JR金沢駅周辺は北陸新幹線開業へ向け、店舗やホテルなどの集積が進み、今後、人の
行き来が最も増える地域となる。武蔵地区では再開発が進んでいる。富山市でも総曲輪地区などの再開発事業の進捗に伴い、犯罪対策も重要な課題となろう。
これらの地域は深夜になると一転、人通りが少なくなるのが治安上の弱点でもある。そ
の地域に犯罪の死角があり、防犯カメラが有効と認められれば設置をためらう必要はないだろう。
北陸随一のネオン街である片町地区では二〇〇三年十二月から県警、金沢市が防犯カメ
ラ四十五台を設置し、刑法犯認知件数は四年連続で減少した。県警の重点的な取り締まりもあろうが、カメラ設置を機に客引きなど路上の違法行為は確実に少なくなった。同じくカメラを設置している金沢市竪町でも落書きなどが減った。
防犯カメラ設置の拡大に対しては監視社会の広がりを危惧する声も根強い。片町地区で
も当初はプライバシーとの関係で論議が沸き上がったが、今はそうした論議はあまり聞かれず、むしろ安心して歩ける商店街づくりへ向け、積極的に導入する傾向もうかがえる。
すでにコンビニ、金融機関、スーパーなど民間施設では屋外にもカメラが設置され、街
にはカメラによる防犯対策が浸透している。至る所でカメラが稼働する社会を窮屈と感じる人もいるだろうが、設置の是非については犯罪抑止とのバランスの中で考えていく必要がある。カメラ設置拡大に際しては、保存記録の運用ルールを厳格に守っていくことが重要なのは言うまでもない。
◎ルビーロマン 夕張メロン級に育てたい
開発に着手してから十四年、「ブドウの貴婦人」がいよいよ市場に登場する。県産の新
品種ブドウ「ルビーロマン」の初競りが十一日に行われることが決まった。鮮やかな赤と粒の大きさが特徴的な外見だけでもインパクトは十分であり、全国区の知名度を誇る夕張メロンや、東国原英夫知事のトップセールスで一気にブレークした宮崎マンゴーと肩を並べるようなブランド果実に育ってほしいとの期待が膨らむ。
県は、ルビーロマンを能登大納言小豆や源助ダイコンなどとともに石川を代表する農産
物として全国発信を目指す戦略作物と位置付けている。ただ、まだ生産量が少ないため、当面は県内市場だけの出荷にとどまるという。ブランド化を図る上での最初の課題は生産量の確保、つまり生産者を増やすことである。
今年は、その課題を乗り越えるための布石を打つ年になろう。まずは県内でより多くの
ファンを獲得しなければならないのは言うまでもないが、併せて、首都圏の百貨店や高級果物専門店、レストランなどの感触を探る試みも加速させていきたい。「作れば高く売れるはず」という明るい将来展望を示すことが、生産者拡大の何よりの呼び水になるはずだ。
もちろん、単に生産量が増えればよいわけではない。たとえば夕張では、収穫されたメ
ロンは特秀から秀、優、良までの四等級に分けられ、良に達しないものはすべて加工品の原料に回される。しかも、その分は生産者の収入にならないどころか、逆に罰金が課されるという。そうした品質への強いこだわりが、夕張メロンの高いブランド力を支えていることは間違いない。
ルビーロマンも、販売はJA全農いしかわが一手に引き受け、夕張と同様に等級を付け
て、一定以上の品質に達していないものはルビーロマンとして流通させない仕組みをとる。多少は市場に出回る量が減っても、この原則は堅持しなければなるまい。生産量と品質をどう両立させていくか。県などの手腕が問われるのはむしろこれからである。