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2008年8月4日

 「長生(ながいき)すれば、楽(たのしみ)多く益多し」。江戸時代の儒学者・貝原益軒の著した「養生訓」の中の一節である。益軒は人生の価値を後半生においていたという

人生50年といわれていた当時、益軒は84歳まで生きた。同時代の長寿者には加賀千代女の72歳、伊能忠敬73歳、滝沢馬琴81歳、葛飾北斎89歳などかなりいたようだ。いずれも隠居してから、思う存分、趣味や仕事を精力的に行っている

それができたのも、江戸時代のお年寄りが敬われていたからでもあろう。だから、「幸福は人生の後半にあるから養生に努め老いの楽しみを楽しもう」(立川昭二「養生訓に学ぶ」PHP新書)と、長生きも希望にあふれてみえる

日本人の昨年の平均寿命が、男女とも2年続けて過去最高を更新した。女性は23年連続の世界一である。喜ばしいことだ。だが年金や医療制度の問題などを考えると複雑な思いでもある

医療技術の向上のおかげのようだが、ただ生きているだけの長命は長寿と言えまい。「長生きすれば苦多し」では若者も将来に期待がもてない。「老い」を楽しめる社会をつくる敬老訓が必要かもしれない。


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