「【コラム・断】努力を踏みにじる大人達」の記事詳細：イザ！

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　大分県の、教員採用試験での口利き問題。こういう事件は、本当に最悪だ。

　大抵の人もそうだと思うけど、僕はこういう「権力を持った人間達が裏で何かを操作する」、というのが、もうとても嫌いだ。なんというか、生理的に受け付けないのである。自分が知らずに不正で採用されていた教師達も、本当に気の毒だ。彼らも実に被害者である。

　僕は作家になる前、法務教官の試験を受けたことがある。少年院の職員の仕事だ。一応合格したけど試験は実に大変で、その勉強の辛さは身に覚えがある。

　範囲が広く、一問のために相当勉強しなければならない。その一問一問の回答は、その人間の大変な労力と膨大な時間の表れだと思う。教育者が、若い人間達のその努力を、踏みにじったということだ。フリーターをしながら生活費を削り、必死に勉強した人間も多かっただろう。その彼らの労力と時間を、つまらない大人達がつまらない指で、弾いたことになる。

　今不安に思うのは、不祥事を起した人間達の中から、自殺者が出ること。以前履修問題の時、校長が自殺した学校があった。教育者が努力を踏みにじり、さらに命まで蔑（ないがし）ろにすれば、もうそこは教育などできる現場でなくなる。もうそれだけは、絶対にやめてもらいたい。潔く罪を認めればいい。それが再発防止に繋（つな）がるのだし。

　日本はこういう事件になると、いつも一部を逮捕して（誰かが全部の罪を被るみたいに）幕引きする傾向にある。正直うんざりするので、今回は違う結果を望む。（作家・中村文則）

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