finalventの日記

2008-08-03

うーむ、ちょっと野暮なことを言うと

 ⇒経営を理解している労働者と、そうでない労働者の格差が拡大していく理由 - 分裂勘違い君劇場

 ドラッカーの思想を前期後期、あるいは何期かに分ける定説はないかもしれないし、初期からずっと継続されている部分はあるんだけど。

 けど、というのは。

 現代日本の場合、このエントリの意味でのドラッカーの「労働者」というのは、ちょっとざっくり言うと基本的に終わっているんですよ。

 ではなにかというと、ドラッカーは「テクノロジスト」と呼んでいます。

 ドラッカーというのは、ドラッカー自身を研究したいのでなければ、晩年の物から逆に読んでいくほうがよいです。

 で、と、「経営を理解してない労働者は、どんどん居場所がなくなり、年収も下がって」というのは、テクノロジストの課題ではないんです。つまり、現代的な課題じゃないんですよ。

 「全世界的なトレンド」という全世界っていうのは均質じゃないし、日本はBricsのセクターじゃないんですよ。

 じゃ、テクノロジストの課題はというと。

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明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命: P.F. ドラッカー, Peter F. Drucker, 上田 惇生

 これに書いてあるんで、古本も安いから読んでない人は読むといいと思いますよ。

 こんな感じね⇒先進国にとって唯一の競争力要因はテクノロジスト

 それと、こっちの本は標題にテクノロジストとあるけど、ちょっと古い。

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テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編)): P.F.ドラッカー, 上田 惇生

 ネットだとこんな感じ⇒第18回:「テクノロジスト」の社会的認知が必要:ITpro

 ほいで。

 なので、「経営を理解してない」というときの「経営」も、基本は変わらないけど、テクノロジストの側から見るとどうよというのがあって、後期ドラッカーは音楽の楽譜に喩えているけど、なんというか、これに近い。

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ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ: オリ・ブラフマン/ロッド・A・ベックストローム, 糸井 恵

 で、もとエントリに戻ると。

 このエントリもだし、対抗的に描かれている左翼さんたちもだけど、基本的にフォーディズムのフレームワークに見える。

 ⇒フォーディズム - Wikipedia

 で、それは、終わったわけではないけど、ほぼ、今の若い人というか、あまり重要な課題じゃないというか。

 トフラーの。

 「 未来の衝撃 (中公文庫 M 178): アルビン・トフラー, 徳山 二郎: 本」

 アドホクラシーという未来がすでにやってきている。

 つうか。

 ポスト・フォーディズムが課題なんだけど。

 けどというのは、これとかこれとか。

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ポストフォーディズムの資本主義―社会科学と「ヒューマン・ネイチャー」: パオロ・ヴィルノ, 柱本 元彦

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ディオニュソスの労働―国家形態批判: アントニオ・ネグリ, マイケル・ハート, 長原 豊, 崎山 政毅, 酒井 隆史

 つまり、左翼さんとかだと、「人間的能力のすべてを労働へと動員し、その生物としての存在を剥き出しにするポストフォーディズム」といった理解なんだけど。

 そういう状態もあるにはあるんだけど、古すぎ。

 IT革命以前の90年代の話題⇒「 国際論争 日本型経営はポスト・フォーディズムか?: 加藤 哲郎, ロブ スティーヴン, Rob Steven: 本」

 現代日本の課題じゃないです。

 むしろ、「人間的能力のすべてを労働へと動員」よりも、「人間的欲望のすべてを商品やサービスへと誘導」するという、欲望によって自縄自縛というか、未来という形のローンというかそういうもので欲望によって拘束される状態のほうが問題なのな。

 ま、このあたりは、左翼さんとかに通じないと思うのだけど。(日本のように絶対的な貧困のない世界にとって貧困は欲望と連帯の問題。)

 で、分裂君、以上の話わかってないわけないのに。

 といういうことでちょっと野暮だけどね。

 つうか、こんな話題、現代で議論する課題じゃないですよ。

 

追記

 ⇒はてなブックマーク - うーむ、ちょっと野暮なことを言うと - finalventの日記

008年08月03日 repon 僕の頭が悪いので、finalventさんのおっしゃることは良く理解できない。fromdusktildawnさんのエントリでの議論は、もはや現代的ではない、と言う主張で良いのかしら?

 それでもいいけど。繰り返すけど、ドラッカーの晩年(現代にもっとも近い)の考えからすると、分裂君の言う意味での「労働者」というのは日本を含めた先進国の現状の課題じゃなくて、「テクノロジスト」が課題なんですよということ。該当書にわかりやすく書いてあるから読まれるといいですよ。

2008年08月03日 CrowClaw インクの収集, 極上獲得手にするmoney うーむ、俺は気付かないうちにフォーディズムの話をしていたらしい。俺の知らない「本心」をたーんと(ry/「欲望によって自縄自縛」の議論は興味深いが。

 それは本心といった思想信条の問題じゃないですよ。この話題の文脈での労働者というのは前提にフォーディズムがあるでしょっていうこと。生産の様式のなかで労働のありかたが決まるのだから、前提にその様式が想定されているというだけのことだよ。

 おまけ。

 君たちまだこんなネガコメっていうかゴミコメつけ回してんのかよ。

2008年08月03日 REV だれが最初に言い始めたか、という面白くない議論にならないといいのだけど。

2008年08月03日 FTTH # |ω・)……, ↓ 「だれが最初に言い始めたか、という面白くない議論にならないといいのだけど」あの歌を歌いたくなったが自重した俺えらいw

 

追記

 ⇒2008-08-03 - 社会の出来事、日常生活の感想

これって結局は、経営スキルのある技能者(労働者)をテクノロジストっていってるんだよね? 若い頃の理論を時代に合わせて焼きなおしただけじゃないの。。

 ちょっと違う。ただし、テクノロジストにはマネージメント能力が問われているとは言っている。

 基本的にドラッカーという人の思想には根幹があるのだけど、若い時の理論の焼き直しではなく、最晩年まで彼の思索は時代に合わせて変化している。そこをきちんと読むがドラッカーを読むということ。もう死んでしまったから、そのうち、その射程はなくなるけど。

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