
語弊だらけの四方山話の会(仮)
※あくまで『(仮)』。正式名称ネタ募集中です(全部自分で考えろよ)
〜from 2006/08/05〜
<こうしん>
2008/08/03
『ifネギま運命([E]ver)』の[中世2]を掲載
2008/08/01
『ifネギま運命([S]ver)』の外伝の残りを掲載
2008/07/30
『ifネギま運命([S]ver)』の外伝の続きを掲載
顔を合わせてより数十分。
簡単に捕まるまでの経緯を説明し合い、終え、2人は一息吐いた。
エヴァンジェリンという少女は、昨日命からがらかねてよりの追っ手を撃退し、今日は消耗した体力と魔力を回復させるため山奥で隠れ休んでいたところ、兵に不意打たれたのだと士郎に語った。
「……おい、何で私じゃなくお前が死にそうな顔をする?」
「俺の所為で踏んだり蹴ったりだったと聞かされれば、気が重くもなる。……本当に済まなかった」
謝る士郎に、エヴァンジェリンは一瞬複雑そうな顔をして、溜息を吐く。
「で、償いたい、か?」
「ああ。迷惑か?」
「それ以前に、だ。信用できると思うか、私は散々追い回されていた身だぞ?」
「む……そもそも、何で追われてたんだ?」
「軽々しく訊くな、ドアホ」
「ぐっ……」
士郎は頬を引き攣らせ、次いで少女のつれない様子を思いがっくりと肩を落とす。
――いちいち自分なんかの反応に、大袈裟なまでに心を動かす。
……エヴァンジェリンは、気付かれないように声を抑えて笑った。
その笑顔には気付かぬまま、今度は士郎が溜息を吐き、ぴっと人差し指を立てる。
「ひとまず、何かして欲しいことはないか? 例えば、ここから逃げるとして、俺が役に立てれる具体的な役割や行動、とか。力量的に及ばないところはあるかもしれないが、出来る限り頑張るぞ?」
「フン、成果で私を信用させてみせる、ということか。まったく、随分と熱心だな? そもそも、お前の所為で私が迷惑を被ったというのも、事実とは限らないというのに」
壁に背中を預けて、呆れたように流し目を送るエヴァンジェリン。
単なる油断か、それとも少し心を許してくれたのか、判断がつかなかったのでその体勢については触れず、士郎は肩を竦める。
「放っておいたら、気になって夜眠れなくなるって分かりきってる。……だから回避したい、とかどうだ?」
「……クッ」
馬鹿げた台詞に、エヴァンジェリンは俯き、肩を震わせて笑いを堪える。
一方、士郎は流石に堪えきれずにぼそりと呟いた。
「……どっちなんだかはっきりしてくれないか」
「……っ、クはっ、な……何か言ったか?」
終わらぬ笑いを何とか打ち切り、エヴァンジェリンは未だ半分笑ってるような表情で士郎を見つめる。
少々弱々しく、呆れ混じりに繰り返す士郎。
「信用してないとか、出来ないって言うなら、それらしい態度を取ってくれって言ってるんだ。……それとも、隙を見せて誘ってるのか?」
「ム? ……いや、敵が敵だとはっきりしないのは久しぶりだからな。そもそも、こういう風に他人と遣り取りするのも久しぶりだから、単に油断しているんだろう。……と言って信じるか?」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、士郎の顔を覗き込むようにしてエヴァンジェリンは訊ねた。
対して士郎は、
「(見た目は子供の癖に全く純粋じゃないな。……まあこの姿じゃ俺も他人のことは言えないか)」
という感想を無表情の裏に押し隠し、真っ直ぐエヴァンジェリンを見詰め返す。
「エヴァンジェリンが信じろと言うなら信じるさ。当然だろう? 俺はエヴァンジェリンに信用してもらいたいんだから、疑ったら本末転倒だ」
「……言ってることは解るが、本気か?」
「言うまでもない」
淀みなくはっきりと頷く士郎に、エヴァンジェリンはしばし停止。
やがてぶるぶると体を震わせ始め――爆発。
「――クッ、八、アッハッ、ハッハハハハハハ!! ヒッ、ハッ、こ、この、笑ッ! ッ、クックックッ、アッ、こ、笑い殺、ハハハハハ!!」
士郎を指差し、必死に何かを言おうとしながらも成せず、延々と笑い続けるエヴァンジェリン。
左手でお腹を押さえて、小さな右拳でぺちぺちと壁を叩く。
何がツボに入ったんだか全く分からない士郎は、状況についていけないまま、突っ立ってその様子を眺めること1分余り。
やがて溜息を1つ吐き、牢の角へと移動して膝を抱え込んだ。
「お、おい?」
「……」
「あのな、私は拗ねたガキの扱い方なんぞ分からんのだが……」
「……」
「…………」
「……」
「……ええい、都合の悪い時ばかりガキぶるつもりかキサマ!」
肩、ではなく頭を鷲掴みにして士郎にこちらを向かせようとする。
が、少年はそのまま仰向けに寝転がった。
……寝息。
「……………………死ね」
顎と首の骨を諸共砕くつもりでエヴァンジェリンが足を振り上げた瞬間、慌てて士郎が飛び退る。
「なっ、なんだ!? って、あれ、今の……え? 何でエヴァンジェリンが怖い顔だ……?」
支離滅裂な言動にブチブチと切れ続けていたエヴァンジェリンの中にある何かが――
「あ、笑い終わったのか?」
――最後の一言で全て切れ終わった。
「フ、フフ、そうだ、そもそもなんで私がキサマの機嫌を気にしなければならない……? ハ、ハハッ、そうだ、そうだ、どうかしてるぞ、私」
ギュッと拳が握られる。
ドクンドクンと有りっ丈の魔力が肉体をめぐり、矮躯に化け物染みた強化を果たす。
「え、エヴァンジェリン?」
「キサマが悪いッ!!」
少女吸血鬼渾身の一撃は、頑強な岩壁を無視して士郎を100mほど打っ飛ばした。
異世界放浪士郎解説
隔日更新挑戦中 \(〃▽〃)/