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【社説】

経済閣僚 改革路線を捨てるのか

2008年8月3日

 福田改造内閣の顔触れをみると、少なくとも経済政策については、首相の意図がはっきりした。「小さな政府」路線からの決別である。改革放棄・ばらまき復活ならば、日本売りが加速する。

 二〇〇一年四月に誕生した小泉政権以来、政府与党内で続いてきた政策論議の対立軸は「大きな政府」か「小さな政府」か、という路線選択だった。

 自民党政権は激しい党内論争を繰り返しながらも、小泉、安倍と二代、約七年間にわたって「小さな政府」路線を推し進めてきたが、今回、福田政権は「大きな政府」路線へ大胆にかじを切り替えたといえる。

 大きな政府を目指す人々は市場を生かす民よりも、規制や所得再分配を担う官の役割を重視する。必然的に政府の規模は大きくなり、歳出削減より拡大する財政需要を賄うために増税を志向する。

 消費税引き上げを訴えてきた与謝野馨経財相や谷垣禎一国交相は言うに及ばず、折々の発言をみれば麻生太郎幹事長、伊吹文明財務相、町村信孝官房長官らは政府の役割を重視してきた。かつての郵政造反組の野田聖子氏も消費者行政担当相として入閣した。

 その一方、公務員制度改革を進めた渡辺喜美前金融相兼行革相や大田弘子前経財相ら小さな政府派の閣僚は退任した。

 少子高齢化が進む中、たしかに高齢者医療をはじめ社会保障政策などで見直しが必要な部分がある。だが、最近の居酒屋タクシー問題を持ち出すまでもなく、政府部門には、なお多くの無駄や非効率が残っている。

 無駄や非効率はなくさなければならないが、既得権益に固執する霞が関官僚は抵抗する。福田政権は新しい陣容で、どう改革を進めようとするのか、大きな懸念がある。それとも、いっそ改革路線からも決別するのだろうか。

 すでに燃料費増加分の九割を国が補てんする漁業対策など、ばらまき財政復活を思わせる政策も出てきた。その財源を赤字国債で埋めるなら、財政再建は遠のく。借金を避けて増税を目指すなら、まさに大きな政府になる。

 政府与党内には、骨太の方針2006が掲げた歳出削減計画自体を見直すよう求める声もある。年末の予算編成に向けて、そうした声は一段と高まるに違いない。

 金融不安や原油高など経済環境が厳しい中、福田政権は時代の歯車を逆転しようとするのかどうか。予算編成が試金石になる。

 

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