内閣改造では、政権と国民の間の深いミゾを埋めることはできなかった。毎日新聞の福田改造内閣に対する世論調査で内閣支持率は25%と、先月に比べて3ポイントの微増にとどまった。
福田康夫首相は、自民党幹事長に昨年、総裁選を争った麻生太郎氏を起用した。調査では、麻生氏に「期待する」との回答が57%に上ったが、内閣・党人事全体は「評価しない」が56%を占めた。人気が高いとされる麻生氏を政権の中枢に引き込んで挙党態勢を敷き、大幅改造による「自前内閣」をつくることで支持率の回復を狙ったが、目算がはずれた。
7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)が支持率アップにつながらなかったことから、首相は改造を反転の切り札と考えていたに違いない。だから、かつての「政敵」に幹事長就任を懇請したのだろう。それがうまくいかなかったことのダメージは大きい。
注目されるのは、調査で、首相の目指す政治が内閣改造によってはっきりしたと「思わない」人が72%に上ったことである。大多数の国民は、福田首相がどんな日本を目指すのかを明示していない、と考えていることを示している。
衆院議員の任期満了を迎える来年秋までには衆院選がある。調査結果は、与党にとっても深刻である。5月以降、民主党に後れを取っていた自民党支持率は、2ポイント上昇して民主党と並んだとはいえ、次の総選挙で勝ってほしい政党は、民主党(46%)が自民党(31%)を上回り、この傾向は福田政権発足直後から変わっていない。自民党の構造的危機が続いているのは間違いないだろう。
福田改造内閣は何をすべきなのか。調査で、改造内閣を支持しない人に理由を聞いたところ、「政策に期待できない」が47%、「首相の指導力に期待できない」が38%に上った。
毎月のようにガソリンをはじめ諸物価が引き上げられ、国民生活を直撃しているのに、政府からは原油高や米経済の後退など原因を分析・評論する声しか聞こえず、財源措置を伴った具体策の全容は見えない。
年金の記録漏れ問題は解決のめどが立たず、来年度から国庫負担が増える基礎年金の財源問題も方向を打ち出せない。これに関連する消費税問題はどうするのか。調査結果は、政権への有権者のいらだちと不満を映し出したものだろう。
臨時国会で焦点となる新テロ対策特措法の延長問題の取り扱いも、首相は明言を避けた。
福田首相は早期の臨時国会召集を決断すべきだ。調査では、衆院解散・総選挙の時期について「できるだけ早く」が45%に上った。毎日新聞も早期の解散を求めてきた。臨時国会で総選挙をにらんだ総合的な政策ビジョンを打ち出さなくては、国民の期待に応えることはできない。
毎日新聞 2008年8月3日 東京朝刊