地下空間にそびえるコンクリートの列柱群。地下水の影響で霧が立ちこめ、ライトに浮かび上がる姿は神々しくもありました。
埼玉県春日部市の郊外にある、大雨の際に水をためて洪水を防ぐ国の施設です。その姿は、ギリシャのパルテノン神殿にも例えられますが、SFなどの秘密基地といった趣でもあります。実際に、鉄人28号や仮面ライダーといった特撮映画やテレビのロケにしばしば使われています。
これは、三日の朝刊紙面に掲載する特集「首都圏の地下探訪」で取り上げた施設です。特集は、写真集出版など地下施設が注目される中、地下開発が続く首都圏で一般の人にも公開されている施設を中心に紹介します。
東京都心の官庁街・霞が関の地下では、電線や水道管などを収容する共同溝として国内最大級のトンネルが建設中です。東京駅近くのビルには地下農園もあります。
今回の紙面では紹介しませんが、幹線道路の地下に全国初の都市内長大トンネルの高速道路ができ、大雨の水をためる巨大トンネルも別の幹線道路の下に完成しました。こうした際限のない地下開発に、ふに落ちない思いがぬぐえません。
首都圏で窮屈な土地の地下利用に巨費が投じられる一方、多くの地方は活力を失って未利用地が広がっています。春日部の洪水防止の巨大施設が必要になったのは、宅地化が進んで雨水を吸収してきた田畑などが失われたことが要因とも聞きました。
地下探訪から、東京一極集中のひずみが見えてきます。
(東京支社・岡山一郎)