沈黙を守り続けていた慎重居士の福田康夫首相がついに内閣改造を断行した。昨年九月の政権発足後初めての「自前内閣」である。
命運をかけた大幅改造で人心一新を図ったが、小泉純一郎元首相のようなサプライズはなかった。野田聖子消費者行政推進担当相、中山恭子少子化・拉致問題担当相といった女性閣僚起用は支持率アップを意識してのことだろう。自民党役員人事では国民に人気の麻生太郎氏を幹事長に取り込むなど挙党態勢を印象づけた。
安倍前政権の閣僚をほぼ引き継ぎ、「背水の陣内閣」と命名して発足した福田政権。「ねじれ国会」での思うに任せぬ政権運営にいら立ちを募らせ、期待された「サミット効果」も不発に終わった。
二割台に低迷する内閣支持率をアップさせる数少ないカードが内閣改造だった。福田首相の座右の銘は「行蔵は我に存す、毀誉(きよ)は他人の主張」という。勝海舟の言葉で、出処進退は自分で決めるべきだという意味だ。
首相にとって衆院解散をにらんだ今後の政権戦略に直結する内閣改造を断行したことは、福田カラーの演出を図り、政権を維持しようとの強い意志の表れだろう。
新内閣で何にどう取り組むのか、顔触れを見ただけでは伝わってこない。強いメッセージを打ち出せなければ政権浮揚もおぼつかない。