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国保・出産の安心揺らぐ ―福山市長選に問う― '08/8/2

 ▽負担増 不公平感募る

 六月の福山市議会。市国民健康保険条例の改正案が可決され、二〇〇八年度の国保税(医療分)は九年ぶりに一人平均年二千九百二十六円引き上げられることが決まった。

 「高齢化で医療費の増加に歯止めがかからず、どうしても上げざるをえない」。市国保年金課の下江正文課長は苦しい台所事情を説明し、理解を求める。

 基金を取り崩して〇八年度は上げ幅を半分に抑えたが、医療費の増大に追いつかずに〇九年度も引き上げざるをえないという。市の見込みでは最低でも本年度と同額のアップが避けられない。

 年5億円放棄

 市によると、新たな負担増による増収分は〇八年度は約三億三千万円。一方、市は国保税の滞納を年五億円以上も徴収せずに放棄している。生活困窮者などやむを得ないケースもあるが、未収金額は二〇〇四年度から十億円を超えている。「取れる人から取る」手法は現実的だが、不公平感も当然募る。

 「ガソリンが上がり、公共料金が上がり、さらに国保税まで。痛い」。福山市三之丸町のお茶販売業山本耕嗣さん(58)はため息をつく。「値上げせざるを得ない状況も理解できないわけではない。だが、正直者が損をするのでは、と仲間うちでも話題に上る」と話す。

 市の国保税収納率は91・87%。全国の中核市では悪い方ではないが、一位の富山市(94・81%)のレベルまで引き上げれば値上げ幅分はほぼ解消できる。

 福山大経済学部の平田宏二准教授(財政学)は「適正な財政運営のためにも、市は徴収率を100%に近づけることが必要」と指摘する。公的年金制度が行き詰まっているのは、制度への不信感から滞納者が増えているのが一因なのも明らかだ。

 医師確保まだ

 安心の揺らぎは医療現場にも及んでいる。福山市民病院(蔵王町)の産科部門は〇七年四月、岡山大が医師の派遣を中止した。それまでは母体の緊急事態にも対応してきたが、専門医師の不在で難しくなった。

 「福山市は五十万人近い大都市なのに」。安心して出産できる環境を求める妊婦らの声は切実だ。

 市は岡山大に派遣の要望を続ける一方、ホームページに採用情報を掲載したり、医師派遣会社へ登録したりしている。医療雑誌への広告掲載もしているが、医師の確保には至っていない。

 医療体制の充実、負担の不公平感を生まない努力…。市民が安心して暮らせる基盤づくりは容易ではない。(与倉康広)

 ●クリック 福山市の国保税

 市は2008年度の国保税(医療分)を9年ぶりに一人平均年2926円引き上げることを決め、6月の市議会定例会で可決された。被保険者の負担は平均年7万2622円から7万5548円になる。未収額の合計は、06年度の時点で約45億2600万円に上る。市によると、07年度見込みで国保の財政調整基金約11億円を国保特別会計へ繰り入れるため、基金は残り13億円になる。

【写真説明】国保税の運営や税滞納者への督促などを担当する市国保年金課




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