「気晴らし食い」という言葉を知っていますか。嫌なことがあったり、ストレスがたまると、イライラを生じたり、憂うつな気分になります。これらを晴らすために食べるやけ食いを「気晴らし食い」と言います。おなかがすいて食べるのではなく、嫌なことを忘れるためや、嫌な気分を解消するために食べます。これは女性に多く、男性のやけ飲みに相当します。気晴らし食いややけ飲みを重ねていると肥満になります。これをやけ太りと言います。
気晴らし食いの場合、おなかがいっぱいになると、おなかが苦しくて食べられなくなります。しかし、過食の場合は吐く寸前、または嘔吐(おうと)するまで食べてしまいます。これを繰り返すことを過食症と言います。過食後、太らないように自ら嘔吐したり、下剤を乱用したりします。そして、無気力感、抑うつ気分、自己卑下などを伴います。
この繰り返しで、気分の晴れている時が少なくなり、ますます自信をなくすので、うつ病を併発することも少なくありません。こうなると、うつ気分を晴らすためにより過食にのめり込んでいきます。また、うつ病を発症してから過食症になる場合もあります。このように過食症とうつ病は密接に関連しています。過食症にならないためには、無理なダイエットをしないことや我慢し過ぎのストレスをためないことです。ストレスがあれば、過食以外の解消法で晴らす方法を日ごろから身につけるように心掛けることが大切です。
次回は「心臓疾患とうつ」について。(大阪市立大大学院医学研究科教授・神経精神医学、切池信夫)
毎日新聞 2007年9月15日 大阪朝刊