取材・文:小林陽子 写真:秋山泰彦
自殺したアイドルの“如月ミキ”の一周忌に、5人のアイドルオタクが集まり、自殺の真相を探るワンシチュエーション映画『キサラギ』。5人のオタクにふんしたのは、小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅(ドランクドラゴン)、香川照之。それぞれの個性がぶつかり合い、爆笑必須のコメディー作品に仕上がった。この作品を通して大の仲良しになったという5人に、笑いが絶えなかったという撮影現場の様子や、5人で演じることの楽しさについて話を聞いた。
■僕らは戦友! 互いを尊敬し合う関係 Q:完成品をご覧になっていかがでしたか? 香川:じゃ、塚地くんから行きましょ! 塚地:そうですね。僕が正しいことを言いましょう!(全員笑)この映画は、レベルが高いんですよ。サスペンスの要素も高いんですけど、コメディーのレベルが結構高いんですね。僕は芸人ですので、笑えるか笑えないかのチェックは非常に厳しいんですけど、これはめちゃめちゃ笑えましたね(笑)。かなりクオリティーが高いので、コアなお笑い好きの人にでも笑える内容になっていると思います。 ユースケ:その通りです。塚地君の言うとおり! 正解だよ(笑)。 全員:(うなずく) Q:皆さん、とても仲が良いそうですね? ユースケ:皆さんがイメージしている仲良しという生半可なものではなくて、なんていうんでしょうね……、修羅場を戦い抜いた戦友って感じなんですよ。だから仕事人としても戦友としても尊敬しているし、そこまでの域に達していますよね。 塚地:戦友! 戦友! 香川:そうだね〜。 小栗&小出:うんうん。 ユースケ:なかなかここまで思えるってことないですから……。 |
■テンションの上げ下げも一丸となって Q:撮影現場は戦場のようにつらかったのですか? ユースケ:撮影自体がワンシチュエーションじゃないですか。だから夏の暑い中、四六時中ずっと同じセットに閉じこもりっぱなしなわけですよ。今考えると……とてもつらかったですけど、とても楽しかったですね。 塚地:一部屋の中にずっといたし、セリフの量もめちゃめちゃ多かったしね。 Q:ずっと同じ場所で撮影していると、テンションの維持が大変ですよね? ユースケ:もちろん大変でしたけど、テンションが下がっちゃったら「下がっちゃったね」って言って、それはそれで良しとして(全員笑)、そしたら、監督やスタッフ総出でワッと盛り上げていましたね。 塚地:「下がっちゃったね……」ってオイ!(笑)。 小栗&小出:あはは(笑)。 ユースケ:総出で一緒にテンション上げるんですけど、それでも下がっちゃったら「ま、いっか!」とか言ってさ(笑)。 塚地、小栗、小出、香川:(大爆笑) |
■3週間笑いっぱなしの現場 Q:本当に楽しそうですね。小出さんはずっとニコニコしていますが。 小出:あ、そうですね(笑)。今回のキャスティングがとても素晴らしかったのでいるだけで楽しくなってしまうというか……バランスの良い絶妙な人たちが集まっていて……あれ? なんだっけ(笑)。 ユースケ:おーい! なんだっけって何だよ(大爆笑)。 塚地:おれのこと見るなよ(笑)。 香川:なんだっけって、おかしいだろ! 小出:僕が言いたいのは、ほとんど休みがなくて大変な思いをしたんですけど、余裕がない中、スタッフとキャストが一丸となって撮影に取り組めたことが良かったのかなって思います。僕にとって、この現場はとても勉強になりました。 Q:小栗さんもずっと笑っていますが、皆さんと一緒だと楽しいですか? 小栗:楽しいです! Q:撮影では何が楽しかったですか? 小栗:楽しかったことですか……。う〜ん……。 ユースケ:これだけね、彼が悩んじゃうくらい楽しかったんですよ(笑)。 Q:誰が笑わせてしまうんですか? ユースケ:全員が面白いんですよ(笑)。何かを見ては笑っちゃうんです。撮影中も夜中の2時、3時になると段々、横隔膜が弱ってきて面白くなってきちゃうんですよ! つまらないことでも、笑い出したら止まらなくなる状態が3週間も続いたんです(笑)。 香川:何でか分からないんですけど、なんか面白いんですよね(笑)。例えばね、今、僕たちの前にIC(テープレコーダー)が3つ設置されているでしょ? これ、一つだけテープでほかの2つはデジタルとか、何で真ん中のだけボディーがでかいんだね? って、それだけでおかしいんですよ(一同笑)。僕が役柄で身に付けている苺のカチューシャだって、最初はおかしかったんですよ。カチューシャを付ける“イチゴ娘”って衝撃的じゃないですか。でも、それ以上に笑えることがたくさんあり過ぎて、カチューシャでは笑えなくなってきたんですよ(笑)。あの姿以上に笑いがあるってすごいでしょ? 要するに、脚本がよく考えられているってことですよ! |
■血を吐く思いで挑んだ撮影 Q:ワンシチュエーション映画で長ゼリフの映画って大変ですよね。 ユースケ:普通はこういうタイプの劇って、持たないと思うんですよ。セリフも長いし、ワンシチュエーションだし……。 小栗:よく頑張りましたよね。 ユースケ:脚本が面白いって言ってもらったのも、僕らも血を吐く思いをして仕事していましたからね。オシッコもまっ茶色ですよ(笑)。っていうのはうそですけどね(笑)。まぁ、それくらいみんなで頑張ったと言いたかったんですよ。本当に、皆さんのお陰って感じですね。 Q:劇中でみなさんが集まるきっかけとなったネットへの書き込みとか、実際にもご覧になったことは? 塚地:パソコンあると何でも調べられますしね、趣味とか、自分の好きなものを共有できる仲間を見つけられるので「すごい!」って思います。 香川:ほんとは思ってへんやろ〜(笑)。 Q:劇中のアイドルをこよなく愛したように、皆さんにも熱中できるものってありますか? ユースケ:僕は仕事以外に熱中できるものってあまりないんですけど、僕らが演じた5人っていうのは、ある意味うらやましいなって思いますよね。一つのものに生涯をかけてもいいと思っているということが……。ここまで熱中できるものってそうそうないじゃないですか。(ここで、小栗旬がユースケの髪に付いたゴミをとってあげる) 香川:僕はですね……(悩)。熱中できるもの……(悩)ちょっと思いつかないから、塚地君からお願いします! 塚地:僕は仮面ライダーが好きですね。最近だとサバイバルゲームをやっています。 小出:僕はゲーム機ですね。 ユースケ:なんかリアルだな〜(笑)。 小栗:僕、なんだろうな〜(悩む)。う〜ん。女の子かな〜(笑)。 ユースケ、塚地、香川:渋いな〜。そうだよな、そうだよな。そりゃ野郎はみんなそうだよ(笑)。 |
■再共演を熱望する仲良し5人組 Q:もしまた5人で何かをやるとしたら? 塚地:僕らってドリフターズに近いなって思ったんですよ。だから、コントとかいいですよね。バンドもいいな。 ユースケ:サラリーマンNEOみたいなのも良いよね。でも、この5人だったら何でもできると思いますよ、シリアスからコメディーから何でも。 小栗:『キサラギ』の舞台も1回だけやってみたいね! 小出:また一緒に映画に出たいですね。 ユースケ:芝居モノは良いんですけど、生放送だけは無理かもね(笑)。 香川:生はできないね〜(笑)。 Q:『キサラギ』第2弾があったら? 塚地:喜んで出演します! 小栗:もちろん! ユースケ:自分以外に4人がいるならやりますよ! 小出:あと、またみんなでご飯を食べに行きたいです。ユースケさんがおいしい店を教えてくれるんですよ。ユースケさんグルメなので。 ユースケ:そうそう、みんなでおいしいもの食べに行こうよってね。 Q:ユースケさんがごちそうされるんですか? 小栗:順番なんですよ。 ユースケ:おごったり、おごらなかったり、いろいろあるんですよ。香川さんがよくごちそうしてくれます。 香川:いやいや、順番順番! ま、一番年寄りですからね(笑)。 |
劇中の衣装と同じブラックスーツで現れた5人。見るからにカッコよく迫力がある5人だが、インタビュー中は、笑いが止まらず中断するほど大爆笑が続いた。しかし、本編と同じよう会話中における“あうん”の呼吸はぴったりだった。5人で活動できたらと願う彼らが、今後どんな活動を見せてくれるのか楽しみだ。
『キサラギ』は6月16日より渋谷シネクイントほかにて公開。