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社説(2008年8月2日朝刊)

[福田改造内閣(上)]

まだカラーが不鮮明だ

 就任から十カ月、福田康夫首相が初めて自前で陣立てした「改造内閣」が発足した。

 福田内閣は北海道洞爺湖サミット後も支持率が低迷。「レームダック(死に体)」とささやかれ、何をしたいか分からなかっただけに、改造でどう「福田カラー」を打ち出すかが注目されていた。

 顔触れは派閥の重鎮や政策通をそろえたものの、党内融和を優先させ、横滑りや再任が多くなったために新鮮味に欠ける陣容になったのは否めない。つまり「何をしよう」とする政権なのかが鮮明になっていないのである。

 党役員人事では麻生太郎氏を党運営の要になる幹事長に指名した。

 政治信条が異なるとはいえ、政治の閉塞感を打破するには人気がある麻生氏の協力を得る必要があるからで、総選挙をにらんだ起用とみていい。

 首相を補佐する官房長官は町村信孝氏が留任。年金記録問題や批判の多い後期高齢者医療制度などを担う舛添要一厚生労働相も留任した。

 経済財政相に消費税増税を主張する与謝野馨氏を充てたのは、増税に道筋をつけるためだ。財政再建に向けた首相の強い意向を感じさせる。

 とはいえ、道路特定財源の一般財源化や公務員改革など早急に解決すべき課題は多いのに、それに対処できる布陣になっているのかどうか。

 財源の裏付けがない「五つの安心プラン」も前途は多難だ。原油高に端を発した物価高騰に対する補正予算しかり。首相には強い指導力が求められているといえよう。

 臨時国会をいつ招集するかも注視しなければなるまい。

 最大のテーマは、インド洋で海上自衛隊が行っている給油活動を裏付ける補給支援特措法の延長問題だ。だが、延長には公明党が慎重な姿勢を示し、与党内での方針の違いが明らかになっている。

 野党第一党の民主党も延長に反対しており、国会の場で与野党がきちんと論議し国民の理解を得るようにするべきだろう。衆院の解散・総選挙の時期でも与党内で思惑が異なる。

 公明党は今秋以降の早い時期を求め、できるだけ来年に持ち越そうとする自民党との違いがあるからだ。

 しかし、改造に踏み切ったのは自らの手で選挙に臨む覚悟を決めたからではないか。

 「ねじれ国会」を打開するためには何が必要か。国民に分かりやすい政治を取り戻すためにも、早めに解散し総選挙で民意を問う必要がある。

 首相は改造の狙いを「国民生活重視の改革を実行するため」と述べ、「安心実現内閣」と命名した。

 「国民目線」を重視する意図は十分に尊重するが、それでも国民の痛みに早急に応えようとする動きが乏しい感は否めない。

 財政再建もそうだが、国民が求めているのは実効性のある具体的施策である。なのに、経済財政政策の基本方針という点で首相が目指す方向性ははっきりしていない。

 支持率の回復にはまず何をするか首相が明確にし、国民の理解を得ることが重要だ。


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