【第40回】 2008年08月01日
TBSが旧ソニープラザ買収
物販事業に走るテレビ局の台所事情
――広告収入低迷で岐路に立つ地上波放送
放送事業以外の
収益向上が急務に
しかしそうもいっていられない状況になってきているのが現実。各局ともに番組制作費の削減を進めており、中には役員賞与削減といった人件費カットに着手する局も出始めている。そしてこのコスト削減と両輪で進めているのが、放送事業以外の収益向上だ。
そこで各局が目をつけたのが「物販事業」。番組を2次使用したDVDやグッズ販売もこれにあたる。そのなかでも各局は通販番組の開発に力を入れている。読者のみなさんも感じているかもしれないが、最近テレビを見ていると「通販番組が増えたなぁ」と思うことが多い。特に深夜については、どのチャンネルに変えても通販番組という時も少なくない。
とくに広告が減少している現状においては、自らが広告主となって、空き枠を埋める必要もある。通販番組であれば、少ない予算で番組を制作でき、空いている広告枠を埋められるだけでなく、物販により商品売上を上げることができ、一挙両得ともいえる。
その流れに合わせ、大きく打って出たのがTBSだ。今回のスタイリングライフ買収で、物販事業のノウハウをグループ内に取り込み、放送外収入を高めようという狙いだ。実際に、TBSの会見でも「放送外収入を現行の2割から3割に増やす」としている。
ソニーグループから独立した
スタイリングライフ
今回、TBSに買収されることになったスタイリングライフについて簡単に説明しよう。冒頭にお伝えした通り、旧ソニープラザなどを傘下に持つ、小売グループである。グループ内には、
・輸入雑貨専門店「旧ソニープラザ(現プラザスタイル)」
・カタログ通販「旧ソニーファミリークラブ(現ライトアップショッピングクラブ)」
・高級フレンチレストラン「マキシム・ド・パリ」
・化粧品販売「B&Cラボラトリーズ」
などがあり、ソニーグループの1つであった。
しかし2006年、ソニーは事業の選択と集中を図るため、上記各社を日興プリンシパルに売却。一定期間を経て、社名やブランド名から「ソニー」という名前も外れ、名実ともにソニーグループから独り立ちした形となった。このときの手法は、MBOならぬ、MEBO(経営者と従業員による買収)といわれ、その資金は投資ファンドである日興プリンシパルによる「プライベートエクイティ」【※注1】で賄われた。
【注1】プライベートエクイティとは?
成長や再生を目指す起業に対し、株式や債権に投資することで投資ファンドが企業経営に主体的に関与。収益を改善・成長させ、企業価値の拡大を図ってから、上場や他社への売却を行なう。MBOの資金としても利用されている。日興プリンシパルによるプライベートエクイティ投資の代表的な例としては、タワーレコード、ソシエ・ワールド、ベルシステムのMBOなどがある。
第40回 | TBSが旧ソニープラザ買収 物販事業に走るテレビ局の台所事情 (2008年08月01日) |
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永沢徹
(弁護士)
1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ
弁護士・永沢徹が、日々ニュースを賑わす企業買収・統合再編など、企業を取り巻く激動を、M&A専門家の立場からわかりやすく解説していく。