この人物のオモテとウラ　山口智子（女優）

　公開後３日間の観客動員数は映画史上最高の「千と千尋の神隠し」を上回り、興行収入もこれに並ぶ勢いだとか。宮崎駿監督の劇場版アニメ最新作「崖の上のポニョ」が大ヒットを飛ばしている。この映画で大活躍しているのが山口智子（４３）である。さかなの子ポニョと並ぶ主人公宗介の母、リサ役で声優として参加している。

　かつてトレンディードラマのヒロイン役で高視聴率を稼いだ彼女も、９５年に俳優の唐沢寿明と結婚してからは徐々に仕事をセーブし、翌年の映画出演３本と、人気ドラマ「ロングバケーション」への出演を最後に、連続ドラマや映画から姿を消した。０４年にはドラマ「向田邦子の恋文」（ＴＢＳ系）で久々に女優復帰したが、翌０５年に父親の雅平氏を亡くし、もうひとつの転機が訪れる。

　山口の実家は栃木県栃木市の老舗旅館・鯉保（こいやす）で、俳人芭蕉を経済的にもバックアップした門弟、杉山杉風（さんぷう）の子孫にあたる。１００年以上続いた旅館そのものも同年８月末に廃業へと追い込まれるが、この年、「旅シリーズ第１弾　ゴッホへの旅」（ＢＳ日テレ）に出演して以降、山口は自ら志願して歴史・教養番組や伝統工芸を紹介するナビゲーター役でテレビ番組にちょこちょこ顔を出すようになった。

「両親の離婚もあって少女時代から旅館の女将だったおばあちゃんに厳しくしつけられた彼女は、昔から着物や職人の世界を身近に感じてきた。１年半前から伊藤忠商事と組んで山口智子プロデュースの婦人服や服飾雑貨の『山笑う』ブランドを売り出し、テレビ東京の『手わざの細道』では、職人の姿を伝えるプロデューサー的な仕事も始めて『おばあちゃんに似てきた』と言っています。高視聴率のドラマ出演にこだわる芸能マスコミの見方をよそに、自分のやりたいことを、マイペースでやってきた感じがしますね」（芸能記者）

●マイペースを貫き通して

　今年はこれに加え、米ファンタジー映画「ライラの冒険　黄金の羅針盤」（３月公開）の日本語版でニコール・キッドマンの吹き替えをこなし１４年ぶりに声優として復活、さらに今回の「ポニョ」では、同じく声優ではあるが、いかにも現代的でさっぱりした山口のイメージそのままに、子どもや老人を守るため、身をていして危機に立ち向かう母の役を演じている。

　夫の唐沢は邦画史上最大規模の制作費をかけた映画「２０世紀少年」３部作で主人公の座を射止めるなど乗りに乗っており、山口は「好きなことをさせてもらっている。ドラマへの出演はお話が来ないだけ」とさらりと言ってのける。

「かつて連ドラで主役を張った女優がテレ東のナビゲーターに身を落とした」と嘆く声もあったが、やりたいことがマイペースでやれるなら、むしろ理想に近い！？　懐の深い女優としての“復活”が期待できるかも。

【2008年7月30日掲載】