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NIKKEI NET

社説1 麻生氏取り込みで福田政権は浮揚するか(8/2)

 福田康夫首相が自民党役員・内閣改造人事を実施した。人事の目玉は「ポスト福田」の最有力候補・麻生太郎氏の幹事長起用である。近づく衆院解散・総選挙を視野に入れ、麻生氏を取り込んで政権浮揚を図る狙いがあるのは間違いない。閣僚も総じて手堅い布陣を敷いたが、改革路線後退の印象もぬぐいがたい。

 福田内閣をめぐる政治状況は極めて厳しい。衆院議員の任期が残り1年となる中で、政界の関心は「いつ、誰の手で解散するのか」に集中しつつある。低支持率にあえぐ福田首相で選挙を戦えるかとの声も出始め、自民党内で高まった改造期待圧力を無視すれば、「福田おろし」が表面化する恐れもあった。

 首相は改造圧力を逆手にとってライバルともいえる麻生氏の取り込みに成功した。麻生氏にとって福田政権に協力するのは賭けである。選挙で負ければ福田氏と共倒れになるが、選挙前に福田氏が退陣すれば政権禅譲のチャンスが生まれる。国民的な人気が高いとされる麻生氏起用の政権浮揚効果に注目したい。

 自民党政調会長に起用された保利耕輔氏は農政、教育などに精通する有能な政治家だが、先の郵政民営化の際には造反組に属した経緯がある。改革路線からの後退にならないかどうか気がかりである。

 閣僚人事はベテランを要所に配する布陣になった。町村信孝官房長官、高村正彦外相らが留任し、財務相に伊吹文明氏、経済財政担当相に与謝野馨氏が起用された。解散・総選挙を意識して与党内には歳出増圧力が高まっている。財源をきちんと手当てして安易なばらまきにならないように留意すべきだ。

 福田内閣は7月末に来年度予算の概算要求基準や社会保障分野の「五つの安心プラン」をまとめた。肝心の道路特定財源の一般財源化の具体策や基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げる財源については不透明なままである。有権者が納得する明確な結論を出してほしい。

 福田政権にとって公明党との関係改善が当面の課題である。衆院解散の思惑も絡んで臨時国会をいつ召集するか、臨時国会でインド洋における海上自衛隊の給油活動を継続する法案の扱いをめぐって自公関係がぎくしゃくしている。

 麻生氏の幹事長起用は公明党との関係改善への布石でもある。選挙を考えれば、自民党にとって公明党との協力関係維持は至上命題だろう。同時に、日本として必要な国際貢献活動を継続させるのは与党の責任であることを忘れてはなるまい。

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