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社説:福田改造内閣 守りの「挙党」ではいけない

 福田改造内閣の顔ぶれが決まった。自民党役員人事ではさきの総裁選で対決した麻生太郎氏を党の要の幹事長に起用し、挙党態勢を敷いた。安倍前政権からほぼ引き継いでいた閣僚を大幅に入れ替え、経験者を多く起用することで総じて手堅い陣容となった。

 低支持率にあえぐ内閣の立て直しを懸け、慎重な福田康夫首相が踏み切った人事だ。だが、首相がどんな政策を掲げ次期衆院選で民意を問いたいか、明確なメッセージが国民に伝わったとは言い難い。首相は記者会見で「衆院解散を論じるより政策の実行だ」と語った。ならば、まず、民意を問うに足る骨太な政策ビジョンを早急に示すべきである。

 人事の一番のポイントは、麻生氏の幹事長起用だ。大衆人気もあり選挙の顔ともなるが、やはり挙党態勢の構築による政権安定が狙いだろう。福田政権にはもともと安倍前政権の崩壊後、麻生氏の総裁就任を阻止する派閥連合の性格があった。状況の厳しさが政権の性格の修正を迫った。

 消費税率引き上げに前向きな与謝野馨氏を経済財政相に起用するなど、財政再建派に比重を置いたのも特徴だ。「郵政造反組」だった保利耕輔氏を政調会長にあて、野田聖子氏も入閣させた。経済成長重視の中川秀直元自民党幹事長ら小泉改革継承派の冷遇と対照を描いた格好だ。

 こう着状態が続く対北朝鮮政策では拉致問題にかかわってきた中山恭子首相補佐官を担当相に昇格させ、打開に意欲を示した。大幅改造の陰で町村信孝官房長官をはじめ、外相、厚生労働相らが留任、政策の継続を意識した。「生活重視」の看板である消費者行政は党で担当した野田氏に委ねるなど、「福田カラー」を補強したと言える。

 ただ、派閥均衡に配慮した陣容で首相が強調する「国民の目線」というメッセージをどれだけ伝えられただろうか。公務員制度改革で官僚と対立した渡辺喜美行革担当相は閣外に去った。次期衆院選で民主党との決戦を控え、内閣支持率が低迷したままでは、福田首相を選挙の顔として戦う不安から「福田降ろし」が公然化する可能性がある。麻生氏起用が、選挙前の首相交代の布石になるとの見方が出るゆえんだ。

 来秋までには必ず訪れる衆院選に向け、政局の駆け引きは強まる。特に自民とのきしみも目立ち始めた公明党との関係をどうするか。臨時国会の日程調整をめぐり、首相はすぐに手腕を試される。物価、原油高など国民の生活不安は増す一方だ。年金など社会保障、税制改革も含めた責任あるビジョンを示さねばならない。

 「ねじれ国会」に最終的な判断を下すのはもちろん有権者だ。だからこそ、首相は早期に民意を問う覚悟を固めたうえで、政権運営にあたらねばならない。

毎日新聞 2008年8月2日 東京朝刊

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