あすから高校野球の「夏の甲子園」が始まる。八日開幕の北京五輪との重複を少しでも避けるため、例年よりやや早いスタートとなる。
今大会は九十回目の節目に当たり、開会式前に行われる記念イベントも楽しみだ。過去の大会で記憶に残る活躍をした人が招かれる。「怪童」と言われた中西太さん、延長十八回引き分け再試合を演じた太田幸司さんらが参加予定で、母校のユニホーム姿で当時を振り返るという。
この人が存命だったら、声がかかっただろう。徳島県の池田高校監督として全国を沸かせた蔦文也さんだ。「攻撃は最大の防御なり」をモットーに、次々と球場に快音を響き渡らせた「山びこ打線」は豪快だった。
ずんぐりした体形から「攻めダルマ」と呼ばれた。個性的な名監督として名を残したが、指導は基本重視で「平凡の非凡」という考え方を教え込んだという。
自著「攻めダルマの教育論 蔦流・若者の鍛え方」によると、「丸いボールとバットで、毎日同じことをやる。つまらんといえばつまらんが、性根を入れてやるかどうかで違ってくる」と平凡なことでも、気持ちを込めて繰り返せば非凡なプレーにつながると強調する。
今大会は丸いボールとバットで、どんなプレーが生まれるか。記念の年にふさわしい好勝負を期待しよう。