日経金融04.05.20    

会計士の卵、就職難深刻に――4大監査法人が採用手控え

 公認会計士の卵が就職難に苦しんでいる。昨年十月に発表された二次試験合格者の一割 、百二十人の就職先がまだ決まらない。
合格者が増える一方、雇用と実務研修の機会を提 供してきた四大監査法人の採用数が伸び悩んでいるためだ。
いずれ二、三千人規模に膨 らむ合格者の受け皿があるのか今から危ぶまれている。  

 日本の公認会計士は約一万五千人で、米国の三十三万人(昨年八月末)に比べ少ない。
金融庁は会計監査の質を高めるため二〇一八年に会計士を五万人に増やす目標を掲げ る。
昨年秋の二次試験合格者数は前年比一割増え千二百六十二人となったが、監査法人 の採用が減少、就職難が突如表面化した。
これまで大手監査法人の採用枠に合わせて合 格者数が決められてきたため、就職難問題はほとんどなかった。  

 今秋も合格者の増加が予想されるのに対し、四大監査法人の採用は「さらに百人程度減 る」(日本公認会計士協会の佐竹正幸常務理事)という。
未就職問題を放置すれば、「受験 生の公認会計士離れ起こりかねない」(同)と業界では危ぐしている。
「三年の有期雇用でいいから、合格者を勉強させて資格を取らせてやってくれないか」
日 本公認会計士協会は今年に入り、四大監査法人に未就職者の救済策を持ちかけた。  

 問題が根深いのは就職できないと「会計士」になる道が閉ざされかねない点にある。
二次 試験合格後、一定期間の実務経験を積み最終試験に合格しないと「会計士」資格は得られ ない。  

 ただ、大手監査法人は一様に難色を示す。不景気で監査法人の収入は伸び悩んでいる。
日本の監査報酬の水準は上場企業一社当たり数千万円で米国より一けた少ない。
「合格 者の千三百―千五百人は大手監査法人で育成したい」とする会計士協会の意向に応える のは財政的に難しい。
人件費や人材教育の負担が増すうえ、「新人を多く連れていくと顧 客に不安・不信感を与える」(あずさ監査法人の三輪彦幸専務理事)と業務にも支障が出 ると心配する声もある。  

 二〇〇六年からの新試験制度導入で合格者はさらに増える。このままでは就職難が深 刻になるのは避けられない。
日本では二次試験合格者の九割が監査法人に就職してきたこともあり、二次試験に合格 してすぐに一般企業や官庁に就職する例は少なかった。
企業側にも「会計士補はいらな い」「会計士資格をとって辞められても困る」と採用に消極的な企業が多い。  

 一方、米国では会計士の活躍の場は広い。三十三万人の公認会計士のうち監査・税務 に従事するのは三八%。一般企業で働く資格保持者が四二%、自治体や政府も四%を占 める。  

 資格試験の予備校TACの福岡広信取締役は「突然の就職難に受講生はびっくりしてい る」と話す。
「社会人の間では受験を見合わせる人も増えている」という。このままでは、優 秀で多様な人材を採用する機会を失いかねない。  

 会計士の増員は、会計基準の整備とともに、日本の会計制度の質を高め資本市場のイ ンフラを整える重要な柱。会計士を増やす法律的な枠組みはできた。
会計士業界と企業 や政府が協力して、人材を育て生かす場を作っていく必要がある.

   http://www.fsa.go.jp/access/15/200310c.html

奥山会長 
公認会計士の素養を持った人間というものはですね、
公認会計士の監査業界のみならず企業においても、あるいは政府においても、
非営利部門においても多数いてよろしいじゃないかというふうに思って
おります。そういう意味では、今回のいろいろな改正論議の中で企業側の方から、
企業にも欲しいんだということで、試験制度を改善する提案を
出してきたということは、私はすばらしいことだというふうに思います。
そういう理念は良いのですけれども、これから難しいのは本当に実施に
至った段階でですね、多数の合格者が出てきた時に実際にそのような適用が
されていくのだろうかと、これは現場を抱える立場としてはやはり
若干の恐れ、不安を持っています。ぜひ、試験制度の新しいところを活かして、
あらゆる分野で公認会計士の素養を持った、

言わば『公認会計士試験合格者』という形でご活躍願えるように、
世の中の理解も欲しいし、また公認会計士の受験者自身もそういうふうに
広がって欲しいなということを思っています。

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