先日、今通っている動物病院の先生が珍しい症例の検査を
出してきました。

なーんか慌てていたらしく、検材がうちに届く前に
電話してきたり、Fax流してきたり。

何だろうと思って見に行くと、検査に出されてきたのは
犬の眼球！(@_@;)
...まぁ　眼圧あがったり、眼球破裂したりは高齢犬ではたまにあるんで
...痛いだけなら、取っちゃった方が楽だもんね。

腫瘍じゃないなら、こっちも少しは気が楽だ〜と思っていたのに
よーく見たら「多発性骨髄腫と仮診断して治療。眼症状悪化、
水晶体脱出後も炎症悪化するので摘出。
多発性骨髄腫を裏付ける所見ありますか？」ですって。

...んー？？？
この文章には大きな矛盾が一つあるんです。
んで、一緒に血液塗沫も出されてきていて、
「骨髄検査は飼い主が拒否。末梢血液中に腫瘍細胞が認められますか？」って...。
多発性骨髄腫で末梢血液中に腫瘍細胞が出てたら
...もうすぐにでも死にそうじゃないですかね？

検査結果はもちろん炎症(非腫瘍)、血液中にも腫瘍細胞なし。
なんですがね...最初の先生の文章に問題点が1つあるんで　電話したんです。

先生「もう化学療法は始めてるんですけど
骨髄検査してないし、骨のパンチアウトもないし...。ちょっと思うところが...。」
maki「え？　そうなんですか？　でも肝疾患なくて、肝脾腫なくて、
貧血と高蛋白血症あって、蛋白のモノクローナルあって高カルシウム血症あって、
ベンス・ジョーンズ尿蛋白陽性だったらもう十分ですよ？」

先生「あ？　そうですかね？　あはは。まぁ...化学療法は開始してるんですけどね。
開始したら水晶体脱出して、投薬を少し減らして、
...数値は少しづつ悪化してるんですよねぇ」
(＠＿＠)
なーんですとーぅ？　電話口で思わず大声を出しそうになりましたょ

犬の多発性骨髄腫は、ある化学療法のプロトコルでもって
(プロトコルってのは、まぁ、抗がん剤の種類、用法、用量のことです。)
70から80％が約1年は維持できます。
(犬猫では1年以上、癌の再発がなければ「予後は比較的良好」の部類です)
ただし、このプロトコルを繰り返すと耐性を示すことが
あるらしいです。
ごく稀にこのプロトコルそのものに反応がない場合があります。
(...５％以下だったか、１％以下だったかな？)

そう、最初の先生の文章の矛盾点はここです。
この症例は稀な疾患の中でもさらにごく稀なパターンでした。
通常の犬の多発性骨髄腫はこのプロトコルに速やかに反応して
血液生化学検査値の異常、眼疾患が治まるんです。

先生はどーも　問題点には気づいていなそうでした。
多発性骨髄腫自体、初めてだったのかもしれません。

こちらとしては気づいてしまった以上、
言わないでおくのも、後味が悪いというかなんというか
(T＿T)
治療方針に口出しするのが仕事ではないので
あんまり言いたくなかったんですが、それは私の正義に、良心に反するので
(;＿;)
maki「...先生、このコ、このプロトコルに反応がないんじゃないですかね？
　　　他のプロトコルでは...？」
と言ったら
先生「...多発性骨髄腫の他のプロトコルを知らないんです。
　　緊急用のプロトコルをご存知なら教えていただければ...」

はーうー(>_<)　話の通じる先生で良かった〜
...不勉強で、いい加減で、逆切れする臨床獣医さん結構いるんですょ。

...でも　こんな事があった後で、親バカっぷりを披露しに行くのは
さすがに気がひけます(笑)。
まぁ　すでに親バカだとは思われてるだろうけど。