面積:111,000平方キロ 人口:11,000,000人
国語:スペイン語 首都:ハバナ(人口;220万人)
いきなりキューバなんていう国をもち出すのは、どうしてか、多くの人は疑問を持たれるだろう。カストロの国、独裁者の言いなりになって、アメリカから経済封鎖され、塗炭の苦しみを味わっているカリブ海の小国。歴史的にはフルシチョフの旧ソ連とケネディのアメリカが核ミサイル問題で対立し、名高い「キューバ危機」を迎えた事。無事危機は回避されたが、以降歴史の表舞台から忘れ去られた国。と言うより、歴史に置き去りにされた国、とでも表現した方が感覚的には正当である。それには大きな理由があるのだが、誰もその事に触れようとはしない。ただ、いまさら時代遅れな独裁者の治める国など、知るに値しない、とは普通の人の持つ感想ではある。
ところで、まずキューバの事をおさらいしておこう。ご承知の通りキューバはカリブ海に位置し、国の中央を北緯20度線が通過する熱帯の島である。伝説によれば、キューバを含む冠状列島は大・小アンチル列島(西インド諸島)を形成し、11,000年前に一晩の内に大西洋に沈んだといわれるアトランティスの一部であった、と語り伝えられている。メキシコ湾の入り口、つまりアメリカ合衆国の喉元に位置し、首都ハバナの正面にはフロリダ海峡をはさんで保養地マイアミがある。その左手は古代史の国マヤがあった、メキシコのユカタン半島に面しており、ここには様々な遺跡が存在する事を予想させる。
キューバ島は1492年にコロンブスによって発見されたとされており、以後スペイン領となっていた。1867年以降独立運動が頻発し、1898年のアメリカ・スペイン戦争(米西戦争)の結果アメリカの保護領になった。しかし、キューバ国内ではアメリカの支配に対する反抗運動が止まず、形式的には1934年に独立し、共和国となった。だが、実質はアメリカの傀儡政権であり、アフリカから連行された黒人奴隷の使役や、サトウキビの収奪農業(プランテーション)などにより貧富の差が激しい植民地と何ら変わるところはなかった。1959年にチェ・ゲバラとフィデル・カストロらによって米傀儡政権を倒して革命が成し遂げられ、社会主義の国になった。だが、本当はキューバは宗主国スペインから見捨てられた国であり、アメリカの植民地政策によって搾取され続け、今でも国の西端に米軍のグァンタナモ基地が存在する大西洋の戦略地にされている。事実、石油が出るわけでもなく、鉱物資源といっても僅かにニッケルと鉄鉱山があるだけで、地政学的価値以外にはさほど欧米の金融資本の魅力を惹きつけるものは何もない。だが、今にして思えばそれが今日のキューバの奇跡をもたらしたと言っても過言ではない。このようにキューバは他の欧米の植民地とは異なった歴史をたどる事となる。それはユダヤ金融資本に操られるアメリカ帝国主義とソ連共産主義のはざまで様々な困難を抱えながら、今日まで歩んできた歴史が見事に物語っている。
ここで、少し視点を転じて、世界の現状を見てみよう。いや、筆者から言わせれば、地球の現状と言った方がより現実味がある。まず、一番の大問題は「エネルギー問題」であろう。現代社会は、石油を始めとする化石燃料の枯渇と化石燃料の使用が引き起こす環境汚染で、まさに地球は破滅の危機にある。この事実は誰もが認識する大問題である。次は世界中の政治家や宗教家、学者・思想家等が「平和」の実現を叫びながら、いっこうになくならない戦争による破壊と殺人である。この事には深いウラが隠されているが、それをここで詳しく述べるつもりはない。その次は持てる者と持たざる者との格差、つまり貧富の格差の問題である。この問題は、先進国と発展途上国、また、先進国・途上国ともに国内での富める者と、見るも無残な貧者との格差、それはもはや是正不可能なほどの広がりに至り、国王と奴隷とも呼べる程に立ち至っている。そして、最後は食料と医療問題である。これらの大問題はすべて単独に起こっているのではない。一つ一つが複雑に絡み合って問題を引き起こしているのだ。が、しかし、根底には一つのキーワードがある。それは、富=金(マネー)である。その上、たちが悪いことに、この富=金(マネー)はすべて、絵に書いた餅=紙くず=不換紙幣であることだ。何の事はない。いま世界中の人々は本質的には何の価値も存在しない、ただの紙切れでしかない想像上の富で身動きが取れなくなっているのである。これは何とした事か、と疑問を持っている人はほとんどいない。いても、諦めるか、何か他にいい智恵はないか暗中模索しているばかりだ。だが、どこにも答などありはしない。なぜなら、この問題の根底にある偽りの貨幣経済は、すべてデッチ上げによる砂上の楼閣だからだ。実体は時が来て潮が満ちれば跡形もなく流れ崩れ去る夢まぼろしのようなものである。
話を元に戻そう。キューバの独裁者、フィデル・カストロほど世界から誤解を受けている人物はいない。逆に、ベネズエラのチャベス大統領は、ブッシュ現アメリカ大統領を名指しで「人類の敵、悪魔の化身だ」と言った。この言葉に対して、旧宗主国スペインの国王は、チャベスに対して言葉を慎め、とたしなめた。マスメディアはこの事だけを報じ、チャベスがあたかも本当のうつけ者のようにテレビ・ラジオで流した。特にわが国のNHKが最も典型的にこの報道を行った。このせいで多くの国民はカストロとチャベスを救いようのない独裁者だとの印象を持ったはずだ。しかし、事実はまったくチャベスのいう通りなのである。911テロで自国民を3000人も殺害し、タリバンとフセインに何の根拠もない言い掛かりをつけて「対テロ戦争」と称して何百万人もの無辜の市民を殺し、いままたイランに戦争をしかけようとしている。これで悪魔と言わずして何と表現するのか。また、それを知っていながら真実を報道しないマスメディアは、悪魔に魂を売った悪魔の手先である。
だが、歴史には、皮肉な側面が必ず存在する。キューバは度重なるアメリカ帝国主義の圧力(幾度かの反革命、カストロの暗殺未遂事件、生物化学兵器による国内かく乱、厳しい経済封鎖)にも耐え抜き、ソ連崩壊後の経済危機を乗り越えて奇跡を起こした。キューバには石油などのエネルギー資源はない、先端技術を持つ大企業も存在しないし、希少金属(レアメタル)などの鉱物資源がある訳ではもちろんない。その上、アメリカの経済封鎖とソ連の崩壊により資金も底をついている。だからこそ、この国で奇跡が起こったのだ。皮肉とはこの事である。禍転じて福となす、この諺の通りのことが実際にキューバで起こったのだ。このキューバが直面した危機とは、即ちいま地球が直面している危機に他ならない。
どうしてこの国は危機を脱する事ができたのか。その具体的な事実をこれから挙げてみたい。まず第一に、乳幼児死亡率が世界最低水準であること。また、平均余命が世界の先進国並みに高いこと。キューバには諺がある。それは、キューバ人は生まれる時は貧乏だが、死ぬ時は金持ちだ、という。どういうことかというと、キューバにはお金がないのでみんな貧乏で生まれる。しかし、健康で長生きをし、死ぬ時は金持ちが罹るような病気でしか死なない……という事だ。キューバでは世界最高水準の医療が施され、しかもすべて無料である。ガンに罹っても手厚い医療が受けられ、エイズはほとんど蔓延が抑え込まれて、近くワクチンさえ開発される見通しだという。
高血圧も、サトウキビから抽出開発された医薬品で劇的に改善され、多くの人の健康維持に寄与しているという。国内ではファミリー・ドクター制度が定着し、医師の能力も高く、医師の数は医師1人あたり国民160人である。これは日本の一人当たり国民700人を遥かに凌ぐ数字だ。しかも、この成果を国内だけに止めず、世界で頻発している地震やハリケーンなどの自然災害発生時には大量の医師団による大規模支援活動を実施し、被災国から大きな感謝の声が上がっている。また、食料自給のため都市農業を実践し、大きな成果を挙げている。しかもその都市農業の内容がすごいのだ。現在、キューバで生産される農産品はすべて有機・無農薬で栽培され、低コストで国民に供給されている。なぜ、有機・無農薬なのか。答は単純だ。農薬も化学肥料もまったく輸入できなかったからである。ないものはしょうがない。が、これが結果的に大成功した。国民は輸入された牛肉や農薬まみれの野菜を食べるかわりに、無農薬・無化学肥料の野菜や、大豆などの植物性蛋白を摂るようになり、あっというまに生活習慣病が激減し、国民が健康になった。もちろんこれが一朝一夕に達成されたわけではない。慢性的な食料不足という苦しみに耐え、土壌の改良、天敵を利用した害虫の駆除、自然環境の回復などを、それこそ食うや食わずで試行錯誤した結果なのである。だが、それに耐え抜いた国民もすごいが、カストロ以下指導部の努力もすさまじいものがある。
今ではキューバにはゴミ問題も排ガスなどの環境問題もほとんどないという。また、原発も存在せず、究極のエコ社会が実現している。
最後に、貧富の問題であるが、当然キューバでは格差は目に見える形では存在しない。カストロでさえ、住居は普通の民家であるといわれている。教育は幼児教育から大学の学位過程まですべて無料であり、識字率は100%である。観光客に接するガイドでも、高度な専門用語がぽんぽん飛び出し、外国人の方がびっくりしたというのは本当の話だ。当然餓死などの問題もあり得ず、陽気なラテンアメリカの気質もあって、自殺する人もほとんどいないという。今の日本といかに異なるか。平均月収3000円程度で、まるで天国のような生活をエンジョイしているのがキューバ人であり、これを奇跡といわずして何というのか。つまり、GNPだとか、豊かな生活にはお金がかかる、とかはまったく無縁なのである。お金ですべてが決まるいわゆる先進国とは、一体何が先進的なのであろうか。突き詰めて見れば、お金など人間の幸福には何の関係もない事がキューバの現状を見れば良くわかる。さらに、キューバの国民は世界の実情に通じており、我々がこの世界の窮状を救うんだ、と意気軒昂であるという。生活の質だけで判断すれば、わが国で億という年収を持つ人でも、キューバでの月収3000円の人のそれに劣るであろう。
では、このようなキューバという国のあり方が、我々にどのような教訓を与えてくれるのだろうか。それは「持続・再生可能な人間の生き方」という大きな教訓を与えるのである。いまのアメリカを始めとする先進各国の行き方は、早晩地球の破壊をもたらし、人類がこれ以上地球に住めなくなるのではないか、という危惧に至る。このジレンマから脱却するためには、
①化石燃料を始めとする地球の鉱物資源をこれ以上掘り出して使用する事を直ちに止めること。
②地球の生態系を破壊するような行為、例えば農薬や化学肥料を無制限に使用する、魚介類の乱獲、家畜の大量飼育、などを直ちに止めること。
③貨幣経済の行き過ぎを改め、違法なローン金利を禁止し、貴金属の裏付けのない通貨の発行を禁止すること。
④樹木の伐採を禁止し、再生可能な植物を利用して生活必需品を製造すること。
⑤もともと違法な税の徴収を停止し、国による軍事行為を直ちに停止し、すべての軍事兵器を破棄し、軍隊の解散を実施すること。
⑥すべての医療と教育を無料とすること。
現行の地球人類のすべての社会システムは、そのほとんどが行き詰まっている。かのアーサー・ケストラーは、「圧倒的に進んだ科学技術に較べて、人間社会を支える社会運営のシステムが余りにも立ち遅れている」と指摘したが、今ではその指摘以上に事態は悪化している。
根拠のない地球温暖化説に見られるように、誤解と誤謬、偏見と利害に偏った現在の科学理論に振り回される事なく、宇宙の一員としての地球という存在の本当の認識に立ち戻らなければならない。地球とは太陽系の第三惑星であり、シリウス星系の一角を占め、広くは銀河系宇宙(ギャラクシー)の構成員である。孤立無援で地球はポツンと宇宙にただ浮かんでいるのではない。太陽系や近隣の星々と有機的に繋がり、影響を与えあいながら存在しているのである。
地球の危機とは何を意味するのだろうか。何の事はない。新たな再生と、次元上昇のためである。リサ・ランドールは「異次元は存在する」と言った。だが、彼女が言っているのは物理学上のいわば生命の存在しない次元の事だ。そんな生命の存在しない次元など何の意味もない。多次元宇宙は厳として存在する。ただし、過去があって、現在があり、未来へと流れて行くのでもない。時間と空間はある意味で錯覚に過ぎない。認識を深める事。意識を広げる事。そして、よく考える事。五感にこだわってはいけない。目に見えぬ世界は存在する。見えないのは波動が違うからだ。何かがおかしい、と感ずることはないか。どうしてこうなるのか、と疑問を持った事はないか。我々は苦悩を持つ事だけが人生だ、と諦めてはいないか。みんな心の目を開くべきだ。目覚めてほしい。我々は何者で、どこから来て、何をしようとしているのか、どうか思い出してほしい。キューバの奇跡はそのために用意されていたのだとは、思わないか。
そう、NESARAは必ず宣言される。そのとき、我々がなすべきこと。その答の一部がキューバにある。宇宙人が助けてくれる、のではない。天は自ら助けるもののみを助ける。これまでスピリチュアルなメッセージは地球上のごく一部の人たちに伝えられていた。だが、伝えられたのは一部の恵まれた人々にすぎない。命を削るような労働に明け暮れる6億人以上の子供と大人は文字が読めない。それは彼らのせいではない。それらの人々のためにこそNESARAは宣言されるのだ。
最後に、カストロの言葉を紹介しておこう。「我々は航空工学も、石油化学も研究しない。そのような研究は我々にとっては意味がない。我々は石油消費の削減につながる研究、輸入資源の代替となる研究、我々が生き残り、健康を保ち、食料を増産し、我が国民と経済に恩恵ある研究だけを行うのだ」…。このことばの中の、我々とは、キューバ国民を指しているのは当然である。しかし、カストロは別のところで、「我々が地球を救う」とも述べている。このことから、カストロの心の中では、我々とは地球上のすべての人間のことだ、と言いたいのは明らかである。
カストロの頭にはもはやブッシュもチェイニーも存在しない。彼らと戦う事も念頭にない。戦争は別な新しい戦争を生むだけであり、無益なものだと悟っている。例え彼らに鉄砲を向けても、彼らは大砲を撃とうとしてくるだけである事を、カストロは良く知っているのだ
筆者は思う。「キューバの奇跡」は、なにか大きな存在が、地球人類の最後の生き残りのための「切り札」として、取って置いたのではないか……と。
ただ一つ、キューバには欠けた植物がある。それは「麻=ヘンプ」という植物であり、薬草である。これも神が地球人類のため、いざ、という時のために、そっと取っておいているのではないかと思うのである。
〔参考文献〕 吉田太郎:著 「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」 築地書館:刊
同 「世界がキューバ医療を手本にするわけ」 同
上記二冊の著書によって、筆者は目を覚まされた。そして、この文章を書くきっかけとなった。多くの人がこの本を読まれる事を希望する。