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【社会】

中部電力などに賠償命令 取材ヘリ墜落で東京地裁

2008年7月31日 12時15分

 長野県で2004年、取材中の信越放送(長野市)のヘリコプターが送電線に接触、墜落した事故で、安全対策が不十分だったとして、死亡した記者三好志奈さん=当時(26)=の遺族が、送電線を所有・管理する中部電力(名古屋市)や国などに総額約1億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は31日、中電とヘリを運航した中日本航空(愛知県豊山町)に計約3200万円の支払いを命じた。国と信越放送の賠償責任は認めなかった。

 鶴岡稔彦裁判長は「中電には(航空機の衝突を防ぐための)航空障害標識を設置する義務があり、中日本航空は安全運航する義務があった」と指摘した。

 航空法では地表60メートル以上の送電線に航空障害標識の設置が義務付けられている。事故現場には標識はなく、中電と国の過失責任の有無が争点だった。

 遺族側は、送電線の鉄塔の高さは30数メートルだが、事故現場は鉄塔間の谷間で地表からの高さは約150メートルだったと指摘した上で、中電に標識の設置義務があったことを主張していた。

 中電は「当時の法解釈では鉄塔の高さが60メートル未満なら標識は不要」と反論していたが、鶴岡裁判長は「そのような法解釈は認められず中電には設置義務がある。設置していれば事故は起きなかった」として賠償責任を認めた。

 遺族側は国に対しても「事故は予見できたのに違法状態を調査せずに黙認した」と訴えていたが、判決は「同法に調査や設置を命ずる権限は規定されてなく、設置を指導するか否かは国に広範な裁量権が認められている」として退けた。

 また、信越放送について「高性能カメラを導入しなかったことが(低空飛行を強いたとして)安全配慮義務に違反するとはいえない」とした。

 事故後、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、事故原因として標識がなかったことを挙げていた。

 <中部電力の話> 判決内容には承服しがたい。ただちに控訴する。

 <中日本航空の話> 判決文を見ていないのでコメントは差し控えさせてもらう。

 【長野取材ヘリ墜落事故】 2004年3月7日午前9時50分ごろ、交通事故取材のため信越放送がチャーターしたヘリコプターが長野県南木曽町の山間部で送電線に接触して墜落、記者の三好さんら乗員4人全員が死亡した。県警は業務上過失致死容疑などで操縦士を書類送検。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は05年の報告書で事故原因を(1)「航空障害標識」の未設置(2)操縦士が送電線の場所を確実に把握せず見張りも不十分−と指摘した。事故後の調査で、全国の送電線のほとんどに標識がないことが判明。同省は山間部の約600カ所などで設置を指導、事故現場でも送電線の両端の鉄塔に標識を付けた。

(中日新聞)

 

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