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一衣帯水の海へ 一から知る「日韓暫定水域」


 「竹島の日」制定で島根県議会に響く「万歳」の声、韓国にあふれる反日デモの波−。混乱と余韻が冷めやらぬ四月中旬、「日韓暫定水域の政府間協議ようやく実現へ」というニュースが飛び込んだ。が、「暫定水域」って何だろう、なぜ共同水域なのに韓国漁船が「占拠」状態なのか、協議の見通しは−。県民には分からないことが多い日韓漁業問題。ここは一から調べてみよう。


四十年の恨
2005/05/16の紙面より

広大な水域に驚き

日本海を占める広大な「暫定水域」。水域設定をめぐって日韓が火花を散らした

■乱獲はどっちだ

 「水産資源の保護を説いているのに、議論が煮詰まってくると『四十年の恨(うら)み』を持ち出される。それを今言われても…」。鳥取県漁協の伊藤美都夫組合長は苦り切った表情を浮かべた。

 絡まった日韓漁業を理解するには、「暫定水域以前」の歴史をひもとかなければならない。

 日本は戦前から世界一の漁獲量を誇る水産大国だった。四十年近く植民地だった韓国沖を含め、日本海はまさに「わが海」。敗戦とともに、米国は日本漁船の乱獲を防止する「マッカーサーライン」を設けたが効果はなく、日本は韓国近海だけで韓国の年間漁獲量の半分以上を水揚げしていた。

 過去を忘れず、「恨(ハン)の国」ともいわれる韓国。乱獲していたのはどっちだ、というわけだ。

■韓国船の違法操業

 日韓にとって不幸な時代は続いた。一九五二年、講和条約でマッカーサーラインが消えた危機感から、韓国が突然引いたのが「李承晩ライン」。資源保護を理由に、越えた日本漁船は片っ端から韓国警備艇にだ捕された。講和条約前を含め、その数約三百三十隻(うち八隻は鳥取県漁船)。四千人近い船員が抑留され、銃撃も浴びた。

 国際法上根拠のない李ラインは六五年の日韓漁業協定でようやく撤廃されたが、今度は日本の方が近代化した韓国漁船の乱獲と違法操業に悩まされるように。さらに漁業水域二百カイリ時代を迎え九九年には新漁業協定が発効したが、最大の焦点になったのが、竹島(韓国では独島)周辺の「暫定水域」の設定だった。

 「新協定で違法操業の取り締まりと資源保護を期待したが、なんだこの暫定水域の広さは、と驚いた」(伊藤組合長)

■いっぱい食わされた

 新漁業協定は沿岸国が優先的に資源利用できる排他的経済水域(EEZ)のほか、領土問題で決着のつかない竹島周辺は「日韓が共同管理する暫定水域」としたが、せめぎ合いと妥協の末決まった水域は、「イカの好漁場である大和堆にぐっと張り出した奇妙な形」(同組合長)、日本の漁業者が目をむくものだった。

 一方、韓国の漁業者が満足したかといえば、まったく逆だった。「水域は東経一三六度まで」の要求は日本の抵抗で「一三五度三〇分」に後退(経度一度で約百キロ違う)。日本のEEZ内での漁獲割り当ても減り、「屈辱的交渉、これで食っていけるか」「政府は日本にいっぱい食わされた」。“恨”が再燃したことを、われわれ日本人は知らない。

 「共同管理」のはずの同水域。なぜ最新設備を持つ日本漁船が韓国漁船に追いやられ、乱獲は取り締まれないのか−浮かんできたのは、「ルールなきゲーム」のような日韓漁業、民間任せの無責任な国の在り方だった。

【メモ】 一衣帯水の海 二つの国が一本の帯のように細長い海で向き合い、ほとんど隣同士という意味。日韓、日中間でよく使われる。「日本海の地図を一度、南北逆さまに見てください。まるで瀬戸内海のように狭く見えるでしょう」(境港水産振興協会の米村健治専務理事)

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