今週のお役立ち情報
現役ディレクターが吼える「テレビバラエティは死んだか」
2008年08月01日12時00分 / 提供:日刊サイゾー
マッコイ斉藤(以下、斉藤) で、今日は何の取材でしょう?
──「テレビはなぜ死んだのか?」というテーマでお話をお願いします。
斉藤 アハハハ!(苦々しい表情で爆笑)。死んでないっすよ。
──でも、死ぬほどつまらないバラエティ番組が増えましたよね。
斉藤 ……。右を見ても左を見てもクイズ番組ばっかりの現状には僕もウンザリですけど。「あってもいいけどありすぎだろ、雑学をそんなに知ってどうすんだ!」って思いますね。
──なぜそういう状態になっちゃったんでしょう?
斉藤 今は視聴者からの苦情電話1本で、番組内容が変わっちゃう時代なんですよ。視聴者も過敏だし、作り手も過剰にビビってる。だからクイズ番組みたいな安パイなコンテンツが人気になると、右へならえで、誰も彼もがそれを模倣しちゃっている状況です。
──具体的に、どんな苦情電話があるのでしょうか?
斉藤 たとえば、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんがおでんを熱がる芸。あれを放送すると、「なぜ食べ物を粗末にするんだ!」「イジメだろ!」なんて苦情が入る。だから最近では「このおでんはあとでスタッフがおいしく食べました」とか「このおでんは常温です」と興醒めなテロップが入ったりするわけです。テロップのせいで、せっかくの面白さが台なしですよ。
──そんなクレームは取り合わない、ってワケにはいかないんでしょうか?
斉藤 僕が『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』のADやっていた頃は、電話でしょっちゅうクレーマーと喧嘩しましたけどねぇ。「なんで朝からバズーカなんか撃つんだ! うるさくて近所迷惑だろ!」と言われたら、「お前のほうがうるせーよ!」と言い返したり。
──今、そんな対応をしたら……?
斉藤 すぐ局の上層部に連絡が入って怒られるか、YouTubeでその音声が流されて、スポンサーを巻き込んだ大問題になるでしょうね(笑)。ただ、僕自身は今現在も、作る前からクレームを恐れて自主規制することはないですね。だって、最初から腰が引けていたら、新しい笑いなんか生まれっこないじゃないですか。とりあえず怒られるまでやりたいことをやって、怒られてから対策を練る、というスレスレの領域を行ったり来たりしています。
──まるで校則に挑む不良ですね。
斉藤 まさにそう。優等生じゃなく、いつまでも学校のイジメっ子の感覚ですね(笑)。僕が今やってる深夜番組の『おねがい!マスカット』(テレ東)でも、セクシーアイドル20人をどこまでくだらない領域までもっていけるか、そしてエロに対する規制も厳しい中、どこまでパンチラを映せるか、ということに挑戦中です。
●泥臭くて面白い芸人がテレビから消える!?
──そういう心意気を持った制作者は、はたして今のバラエティの世界にどれぐらいいるのでしょう? クイズ番組に限らず、安易なパクリが蔓延しているような気がするのですが。
斉藤 『めちゃ2イケてるッ!』の手法をパクる番組が目立ちますね。テロップの遊び方や音の付け方ひとつとっても、めちゃイケが「ピンポーン!」という効果音を使ったら、他番組もすぐに「ピンポーン!」と真似する。きっと制作者が自分の笑いに自信がないから、人気のパターンを模倣しちゃうんでしょうね。でもクイズ番組ばっかりで、バラエティの若いディレクターが育ちにくい環境を考えると、無理もないのかなぁとも思うけど……。
──そんなマッコイさんから見て、今、面白いと思える番組はありますか?
斉藤 ありますよ。頑張ってる人は頑張ってますよ。特にテレビ東京の深夜枠はあなどれない。時流に媚びずに、面白いバラエティをガンガン作ってますから。『やりすぎコージー』にしても『怒りオヤジ3』にしても、過激で斬新。ああいうチャレンジは同業者として嬉しい限り。あとはバラエティじゃないけど、僕が今一番、好きな番組は『真相報道 バンキシャ!』ですね。政治や犯罪に対するあの緻密さと執念深さは、ものすごいものがある。報道バカが報道の限界に挑んでますよね。やっぱ僕らも笑いの限界に挑まないと。じゃないと、若い作り手が育たないし、世界に誇れる日本のお笑い文化も廃れちゃいますからね。
──芸人さんの質が低下していると思うことはありますか?
斉藤 いや、泥臭くて面白い芸人さんは今もたくさんいるんですよ。ただ、彼らの活躍の場がテレビから失われつつあるというだけのこと。だから、僕や一部の芸人さんは最近、「テレビじゃ放送できない笑いはDVDで残そう」という方向に走りつつあります。
──有吉弘行さんが再びヒッチハイクに挑戦するという問題作『我々は有吉を訴える』(ポニーキャニオン)もそのひとつですね。
斉藤 そう。あれはさすがに今のテレビじゃ無理(笑)。でもああいう毒のある笑いを好きな人は大勢いるはずなので、そういう人たちに作品を送り続けるのが僕の使命だと思ってます。あとは現在、『上島ジェーン(仮題)』というDVDも鋭意制作中ですよ。
──なんですか、それは?
斉藤 上島さんがサーフィンに挑戦するという物語。上島さんの“一番熱かった夏”の全記録です。サーファーたちとの交流、そしてひと夏の恋……。水中カメラも駆使して格好よく撮ってますんで、期待してください(笑)。9月発売予定です。
──それはものすごく面白そうですね(笑)。でもDVDって、商売として儲かるんでしょうか?
斉藤 今のところ儲けはほとんどないですよ。でもこういう笑いのカテゴリーを潰しちゃいけないと思うから、僕としては作り続けるしかない。
●本当に面白い芸人だけが最終的には生き残る
──ところでマッコイさんは、テレビ離れの一因ともいわれるネット文化を脅威に感じることはありますか?
斉藤 ないですね。ネットは情報収集には便利だし、YouTubeには面白い動画もあるけども、競争相手とは思わない。ネットの中傷もまったく気にならないです。どうせそういう奴がテレビ局にクレームの電話を入れてるんだろうな、とは思いますけど。
──アメリカでは最近、番組制作者がテレビ業界から飛び出して、YouTubeなどで自分の作品を無料配信するムーブメントがあるそうです。マッコイさんは、そういう活動を視野に入れていますか?
斉藤 無料配信? どうやって女房と子どもを食わせていくのよ(笑)。ないない、そんなのまったく視野にないですよ。
──では、今後も当分はテレビ中心で活動を続けていく予定ですか?
斉藤 ええ。テレビはまだ死んじゃいませんからね。今の時期はたまたまクイズ番組が氾濫して、学校にたとえると、バラエティの世界がいい子ちゃんだらけの進学校みたいになっちゃって、不良も坊主頭にさせられているような感じだけど、そういう風潮も、いつか変わると思いますよ。テレビはこれまでいろんな挑戦をして、いろんな変革を遂げてきたんだから。クイズ番組だってあと1〜2年したら減るでしょうし、お笑いブームというかネタブームもいつか終わって、本当に面白い芸人さんだけが生き残り、昔のようにコント番組で大暴れしてくれる時代が来ると思いますけどね。
──家族揃ってテレビを見ながら大爆笑できる日が、再び来ますかね?
斉藤 来ると思いますよ。まぁそんな時代が来たとしても、僕の作った番組は、不良やオタクなどのひねくれ者が、自分の部屋に1人閉じこもってニヤニヤしながら見るんでしょうけど(笑)。
(「サイゾー」7月号より/構成・岡林敬太)
●マッコイ斉藤(まっこい・さいとう)
1970年、山形県生まれ。 ビートたけしに憧れてテレビ業界に入る。『極楽とんぼのとび蹴りゴッデス』(テレビ朝日)、『すれすれガレッジセール』(TBS)など、多くの人気番組を世に送り“深夜番組のカリスマ”と呼ばれるように。常識にとらわれないぶっ飛んだ制作スタイルが多くのコアなファンを魅了。芸人からの信頼も厚い。
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