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【社説】

グッドウィル廃業 労働者はモノではない

2008年8月1日

 法令違反を繰り返していた日雇い派遣の大手・グッドウィル(東京都)が廃業した。労働者をモノ扱いするような派遣会社は存続が許されない。政府も労働者派遣法の抜本改正を急げ。

 同社は昨年、日雇い派遣労働者を建設現場や港湾作業へ送り込んでいたことが発覚した。危険作業への派遣禁止を定めた労働者派遣法違反である。厚生労働省は今年一月、同社に対して事業停止命令を出した。

 東京簡裁は六月、同社を労働者の二重派遣で職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)ほう助の罪で略式起訴した。これで厚労省は派遣事業の許可を取り消す方針を固めた。要するに、事業継続が難しくなったあげくの廃業である。

 労働者をモノのように動かしていた以上、廃業は当然だ。

 経営陣の責任は重大である。相次ぐ違反は同社首脳が認めるように「売り上げ至上主義、業績偏重の風土」が最大の原因だろう。派遣会社ならば、労働者の権利の擁護を第一に考えるべきだった。

 同社の廃業に伴い登録している派遣労働者約二千三百人が再就職の見通しがたたない状況に置かれているという。解雇される正社員とともに、グッドウィル・グループ挙げて支援すべきである。

 今回の廃業を派遣業界も真剣に受け止めなければならない。法令違反や不祥事は日雇い派遣業界だけの現象ではないからだ。

 派遣業界では偽装派遣がしばしば指摘されている。契約の形は請負・業務委託だが、実態は発注先企業の指揮下に入る。その結果、安全衛生面で責任があいまいになり派遣労働者が労災に遭って補償がおろそかになる恐れがある。

 派遣会社の手数料(マージン)の不透明さも批判の的だ。業界団体によると派遣会社が相手企業から受け取る料金のうち、派遣スタッフには約70%を支払っているという。だが実態は不明である。

 日雇い派遣ではデータ装備費として給料から差し引くことも行われていた。これは賃金不払いであり労働基準法違反ともなろう。

 労働政策審議会(厚労相の諮問機関)は労働者派遣法の改正案づくりに動きだした。たたき台となる案は(1)専門的業務を除き日雇い派遣を原則禁止(2)手数料の情報開示義務付け(3)特定企業への専ら派遣を規制する−などが柱だ。

 経営者側の抵抗もあろうが政府は速やかに結論を得て派遣事業の規制強化を実現すべきである。

 

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