福田康夫首相は1日の太田昭宏公明党代表との会談を経て、内閣改造・自民党役員人事に踏み切る。
昨年9月に発足した福田内閣は、安倍改造内閣の顔触れをほぼ引き継いだ「居抜き内閣」だった。今回の改造は、人事で「福田色」を示す初めての機会である。政策の旗印を鮮明にして、次期衆院選に臨む態勢を組めるかどうかが最大の焦点だ。
7月上旬の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)の終了後も、福田内閣の支持率は低迷したままだ。次期臨時国会の召集時期などを巡り、自民党執行部と公明党との間に不協和音が生じている。今回の改造は、衆院解散を視野に入れた政局の始まりを告げる。自ら有権者に信を問う覚悟を示さなければ、首相の求心力が一段と低下する恐れもある、
次期衆院選をにらみ、与党内からは小泉内閣以来の構造改革路線の転換を要求する声が出ている。原油や食料価格の高騰もあり、財政出動を求める圧力も強まってきた。
首相は国と地方の基礎的財政収支の2011年度黒字化という政府目標を堅持する考えを示している。歳出抑制の手綱を緩めることなく、構造改革を推進する姿勢を明確にしてもらいたい。
重要課題の税制抜本改革を巡っては、消費税率の引き上げを重視する与謝野馨前官房長官ら「財政再建派」と、消費税増税に慎重で、経済成長に力点を置く中川秀直元幹事長ら「上げ潮派」との路線対立がある。首相が与謝野、中川両氏らをどう処遇するかが注目されている。
現在の衆院議員の任期は来年9月までで、あと1年余りの間に衆院選が実施される。首相は消費者庁の創設などで独自色を示しているものの、衆院選に向けて、社会保障などを含む骨太な政策ビジョンを打ち出す必要があろう。
来年6―7月の東京都議選を重視する公明党は、それに全力を注ぐために、年末・年始の衆院解散に軸足を置き始めた。自民党内にも同調する勢力があり、解散風が強まりそうな気配だ。
公明党は次期臨時国会の召集は9月下旬以降でいいと主張している。一方、自民党の伊吹文明幹事長らは、インド洋給油法改正案などを成立させるために、8月下旬にも臨時国会を召集し、十分な審議日数を確保したい考えだ。
召集時期については、改造後の新体制で協議することになっている。選挙や国会運営などで公明党との協力関係をどう維持するかも、首相が背負った大きな課題である。