◎電気料金値上げ 志賀原発停止の影響も大きい
北陸電力が十月から電気料金を大幅値上げするのは、原油や石炭価格の高騰だけでなく
、志賀原発停止の影響も大きい。2号機は約二年間にわたる停止の後、六月にようやく運転を再開したものの、この間のコスト増は燃料費だけで一日一億円弱とみられる。臨界事故隠しの影響で停止中の1号機はまだ再稼働のメドすら立たっておらず、これからも原子力に比べて割高な原油や石炭を大量に買い付けていかざるを得ないだろう。そうなると、「燃料費調整制度」によって、またぞろ値上げの可能性が高い。
そもそも日本が原子力政策を推進してきたのは、石油偏重のいびつな電力供給の構図を
改善するためだった。最近の原油の異常な値上がりは、価格変動が比較的少なく、安定供給が可能な原子力の優位性を内外にアピールするチャンスだったが、みすみすこの機会を逃した。北電経営陣には、臨界事故隠しなどの不祥事で、電気料金の上げ幅を低く抑えられなかったことへの反省を求めたい。
電力各社のなかでも、特に北陸電力や東京電力は、原発の停止などによる稼働率低下で
、石油や石炭の代替燃料コストが大幅に膨らみ、燃料費高騰と相まって経営の二重苦になっている。電気料金は、電気事業法に基づき、該当期間の平均購入価格で算定された基準燃料価格によって決まるため、料金への転嫁は避けられない仕組みだが、原発の恩恵を最大限に享受できる時期に、稼働率ゼロの状態が続いたツケは重い。
北電の電気料金は、値上げ後も電力十社のうち、下から三番目の水準にとどまるという
が、それは水力発電が多い「地の利」のおかげであって、経営努力によるものとはいえない。原発が稼働していれば、電気料金の上げ幅はもっと少なくて済んだはずであり、北陸の企業や家庭に余分な負担を強いる結果となったのは残念だ。
2号機の営業運転再開で、夏場の電力不足を回避し、二酸化炭素の排出量を削減できた
のは良かったが、1号機は相変わらず止まったままである。地元の信頼回復に一層励み、1号機の再稼働を急いでもらいたい。
◎竹島表記再び韓国に 米大統領にがっかりした
米政府機関の地名委員会(BGN)が竹島(韓国名・独島)の帰属先を「主権未指定」
と変更したばかりだが、ブッシュ大統領は見直しを指示し、BGNは帰属先を元の韓国に戻したとの報道には正直にいってがっかりした。
表記の変更に韓国政府が米国に矛先を向けて激しく反発したほか、米大統領が北京五輪
に合わせて今月四日から韓国、タイ、中国を歴訪し、先々で首脳会談を行うことなどから、無難な方向を選んだものと考えられる。
ブッシュ大統領は歴訪国のメディアとの会見で「米国は(領土)紛争を解決できない。
それは(日韓という)主権国家の問題だ」と述べ、日韓の対話を後押しする意向を示したといわれる。表記の変更についてBGNは米国が所有する竹島関係の資料に一貫性を持たせるために行われたと説明したと報道されたが、あれはBGNの独走だったというのだろうか。
主権未指定と変更したのは日本への肩入れではない。韓国は、日本の漁船などの活動範
囲を決めただけのマッカーサーラインを行政権の分離と拡大解釈した李承晩ラインで竹島を自国領とし、実効支配を続けている。
日本も領有権を主張し、国際司法裁判所の審理にともに従うよう韓国に働きかけてきた
が、韓国は無視したままだ。国際社会では、日韓の紛争を考慮し、十九世紀に竹島を“発見”したフランスの捕鯨船の名前を取って「リアンクール岩礁」と表記している国が多いといわれる。主権未指定という表記は中立的であり、リアンクール岩礁と同じ意味といえ、日本としては不満があっても肯定できるものである。
その主権未指定から帰属先を韓国に戻す再変更は韓国の不法な支配を認めるものといわ
ざるを得ない。町村信孝官房長官は表記を元に戻したことについて「米国の立場の変更を意味するとは受け止めていない」と述べたそうだが、そうした解釈は国民に受け入れられるとは思われない。これを機に、ことを荒立てずに解決する道を真剣に探ってほしいものだ。