ソフトコンタクトレンズ用の消毒システム「ニューコンフォームSept」
大手眼科医療機器販売会社「ヤマト樹脂光学」(東京都千代田区)が販売したコンタクトレンズを消毒するケア用品の一部で、製造番号などが改ざんされていたことが分かった。同社は「包装し直し、本来の製品と異なる製造番号等を付した」として30日、問題の商品7120個の自主回収に乗り出した。
朝日新聞の取材に対し、同社関係者は「使用期限を先延ばしするため、日常的に改ざんしていた」と証言しており、使用期限切れのものが市場に出回っていた疑いがある。監督官庁の東京都は同社に立ち入り検査に入り改ざんの経緯を調べている。
問題の商品はソフトコンタクトレンズ用の消毒システム「ニューコンフォームSept」。過酸化水素などの入った消毒液や、チオ硫酸ナトリウムなどの入った中和液でレンズを消毒する。製造販売元の徳島県の製薬会社から同社が仕入れ、関東地方の小売業者など24社150店舗に販売している。
ヤマト樹脂光学によると、回収対象の商品は07年11月から08年7月に出荷した。製造番号は「J0608030 EXP2010―03」などの2種類で7120個。600人が1年間使用する量に相当する。同社は「番号は製造の順番などを示すものであり、使用期限の表示ではない」としている。しかし製造販売元によると、これらの番号は元々、製造側で記載したもので、EXPは使用期限を意味する。回収対象商品の場合、10年3月などが使用期限となる。
取材に対し、同社関係者は「使用期限を先延ばしした日付を記載した箱とシールを準備し、元の箱や、中の消毒液や中和液にはられていたシールと取りかえる作業が日常的に続けられた」と話した。
製造販売元によると、この商品は03年7月から製造を開始。すべてヤマト樹脂光学向けで、03年12月から06年3月までに13万6885セット売った。使用期限は製造から3年で、最後に製造した商品の使用期限を既に過ぎているという。
使用期限が「10年3月」などとされた商品が首都圏の小売店に並んでいるが、これらの記載はでたらめで、商品は実際には期限切れになっていることになる。
日本コンタクトレンズ学会の糸井素純常任理事によると、期限切れなどで消毒力が落ちれば、消毒の際に使う容器に外部から入り込んだ菌の増殖が止まらず、容器に入れたレンズ内にも菌が入り込み、角膜感染症が起きやすくなる。ひどい場合は失明することもある。
日本眼科医会によると、国内のコンタクトレンズ使用者は1500万人を超え、このうち7〜10%が眼障害を発症している。眼障害の3人に1人は洗浄や消毒などの手入れ不足が原因という。
同社は66年に設立。信用調査会社によると、コンタクトレンズや医療機器の販売、薬局経営などで業績が急伸し、06年度の売り上げは768億円にのぼる。
同社は「改ざんは1人の社員がやった。原因究明を行うとともに管理体制の強化を図り、再発防止に努める」としている。(香川直樹、黒川和久)