解説−独文和訳

序文

 “月光”は児童合唱のエチュードであるが、また、音感を養成する作品でもある。学習者はこれによって、正確に音を取り、正しい音程を整えることを学ぶべきだ。歌い手は、今述べたような正しい音程を、任意のいかなる終着点に対しても向けることができなくてはならず、様々に異なった和音を保てなくてはならないからだ。

 ほとんど例外なく小さい音量で演奏されるこの楽曲には、ふさわしいタイトルである。詳述は<遊び方>と楽譜にあるとおりである。

 グロッケン、鉄琴、Metallophone、klangstabe、ビブラフォン、シンバル等の金属楽器は、これをコーラスに任意で加えることができる。ただしその場合でも、音色効果をもたらす楽器は、いずれもとても小さな音量に抑えて出すべきであろう。前にはっきり述べたように、合唱に対しての和音のつながりは絶対に不可欠なのである。

 この作品のテクストはカナダの7年生に由来するものであり、作曲者は彼らに授業で、“月光”という単語の適切な同義語を作るよう依頼したのである。新しく出来た言葉は、おとぎ話の中で作られたかのようであるし、音響上、月の光という概念を明確にするのにふさわしいものである。生徒達によって発見された同義語のうちいくつかは、作曲者のテクストに用いられた。これらの単語と発音は次の通りである。(以下発音部分省略)

遊び方とヒントメモ

<遊び方>

S A T B ソプラノ・アルト・テノール・バス。各パートを4声部に分ける。
音量を次第に増やす。もしくは、音量を次第に減らす。
単音:短く。もしくは、次第に消えていくように。
トリル
上方へのグリッサンド、もしくは、下方へのグリッサンド
シンバル。ジャズ基調で(音量を次第に増やす記号を)ならす。
もしくは、声部がschの無声音を出す。
指揮者の記号−息継ぎ
時間軸:時間の幅は全ての区間で同じ大きさというわけではない。
それらは、音楽的な出来事の持つ性格・深さにより左右される。
+2 +3 +6 +7 増2度で。増3度で。増6度で。増7度で。
-2 -3 -6 -7 減2度で。減3度で。減6度で。減7度で。
R4, R5, R8 完全4度で。完全5度で。完全8度で。
+6↑ +3↓ 音程の指示に附属する傾向の指示(より高く、あるいはより低く)

<ヒントメモ>

A(始まり)

 最初のソプラノは好きな高さの音を平均的な高さに定める。それとは違う音は半音階ごとについていく。全てのハミングはピアニッシモで。

B(6ページ)

 もし歌い手が正しく抑揚を付けて音程を保ったらば、A1,A4,T4の残響の和音は、長3度となる。
 S6,S7の大きな輪の中にある音楽記号は、ソプラノあるいはアルトのソリストによって。任意のテンポとリズムで、常にppで行われるべきである。その間に、全男声はT4に加わる。
 次のS2−S3のソリストの出だしは男声の音から始まるが、S2は(S3より)オクターブ高くし、S3はそこででより低く半音階進行を行う。

C(7ページ)

 歌い出しに向かって、ソプラノが任意のより高い音を出し、それによって合唱を次の通りに導く。すなわち、全声部が(ソプラノが任意で出した)第一音を歌う。その第一音は出しっぱなしにする。それから、別の声部が(それぞれ異なった音を出していき)、目的とする音に向かって、それぞれが自分の出した音を出しっぱなしにして、全音階進行で下降していく。例としてはソプラノがレ−ド−シ♭−ラ♭、アルトがファ♯−ミ−レ−ト゛、等があるだろう。
 次の4/4拍子のところ(p7〜p8)で、指揮者は一瞬の間を強調する。曲線によって直線が遮られているところは、音を出さない。メロディーラインが波状になっていくところは、最初は近くの(声部の)音を、その後には遠くの音を用いて、歌い手が自由に即興演奏してよい。全体的な効果は、月光に照らされた水面の印象に似るだろうし、決して騒々しくはなるまい。

D(9〜10ページ)

 各声部は10ページにある前述の単語に基づいて、それぞれに異なった音の“光”を発生させる。(以下にその方法を述べる。)
 ソプラノは、単語を選んで、その選んだ言葉から即興でメリスマ(歌詞の1音節に対して、いくつかの音符を当てはめる作曲方法)を展開させていき、そのあと、上下方へのグリッサンドにおいて、そのメリスマを素早く崩していく。
 アルトは、これらの単語の母音だけを、ただし素早い下降形のスタッカートで、歌っていき、徐々に遅くそして徐々に小さくしていく。
 テノールは、これらの単語から子音だけを取り出し、前に(BやCで)述べた曲線に従い、これら子音を用いてメロディーの曲線を進めていく。
 ベースは、一つにまとまってこれらの言葉をもぐもぐつぶやく。その際には、歌声が消えていくまで、常にこれらの言葉を深く(低く)、かつ、小さく言うこと。
 次のソプラノソロ(S4)は、自由な言葉を、純潔に整えた音と調和させるべきである。

E(11〜12ページ)

 ここでは、合唱は、狭い空間でのカノンの歌い出しが安定していることを証明できるだろう。つまりこの部分は、8つの声部(S1〜A4まで)が、同じ音程で、かつ、最も短い間隔で、お互いがお互いの音について行くのである。全てピアニッシモ(pp)で!

F(13ページ)

 アルトのソリストは、自分の歌うメロディーを、合唱が和音を形成する際の根音に位置させることで合唱のために尽くす。その一方で、ソリスト(A1)の出すどの4つの音も、合唱によって担がれ、支えられるのである。

G(14〜15ページ)

 全声部をいずれも同じぐらいの大きさの2グループづつに分け、その2グループが交代交代に、指揮棒の記号(↑)で、半音階進行で下降していく。そして、何度も反復して散り散りに別れ、短時間で集まりユニゾンになる。音が次第に消えていって、曲をしめる。