【香港20日共同】北京五輪を来月に控え全土で治安強化が図られている中国で、政府や公安当局への不満から起こる地方での暴動が絶えない。中国指導部は住民の不満を吸収しようと対策に乗り出すが、当局の腐敗体質への不信感は根深く、社会の不安定要因を抱えたまま五輪開催に臨むことは避けられそうにない。
香港紙によると、貴州省瓮安県で六月二十八日、少女の死亡事件の処理への不満から住民一万人以上が公安当局の建物に放火。今月五日には陝西省府谷県で川でおぼれて死んだ人の遺体を公安当局と遺族ら住民が奪い合い、衝突に発展した。
浙江省玉環県では十一日から十三日、臨時居住証の手続きをめぐる口論をきっかけに出稼ぎ労働者ら約千人が派出所を襲撃。広東省博羅県では十七日、派出所に連行された湖南省籍のバイクタクシー運転手が殴られて死亡し、怒った同省出身の仲間が派出所を襲った。
十九日には雲南省孟連県でゴム農家の住民らと警官らが衝突。地元企業のゴム買い取り価格が安いことへの住民らの不満が発端とされる。
大半が小さな事件をきっかけに住民の不満が爆発した形で、公安当局が主な標的になっている。香港の人権団体は「地方の公安当局は地元の暴力組織と結託するなど特に腐敗が進んでおり、住民の不満がうっせきしている」と指摘する。
浙江省玉環県と広東省博羅県の暴動は出稼ぎ労働者が中心だった。博羅県でバイクタクシー運転手をする貴州省出身の男性は「派出所の人間は、外部から来た運転手にだけ目を付け理由もなく罰金名目で金を要求してくる」と、出稼ぎ労働者への差別があると訴えた。
中国政府はこうした住民の不満が五輪開催に直接影響するのを避けようと、地方から北京へ来た陳情者を拘束するなどの強硬手段を取る一方、地方では不満の「ガス抜き」を徹底。今月から地方各地で大規模な陳情受け付け活動を始めている。
ただ暴動の原因を抜本的に解決するのは難しい。中国の内情に詳しい香港誌編集者は「中央政府は、物価上昇による庶民の生活苦や地方当局の腐敗を知っており、暴動に走る住民を支持するわけにもいかないが、非難もできず打つ手がないのが実情だ」と話している。
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