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「残る戦犯、ムラジッチ被告の拘束は困難」と英情報機関元幹部

2008.7.30 18:52

 【ロンドン=木村正人】ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争時のセルビア人指導者カラジッチ被告が旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)に移送されたことに関連し、英情報機関元幹部は29日、産経新聞と会見、逃亡を続けるセルビア人勢力司令官で、同紛争の残る大物戦犯、ムラジッチ被告について、「セルビア軍の協力者にかくまわれているため、拘束は容易ではないだろう」との見通しを示した。

 この元幹部は長年、英国の対外情報部門を担当。元幹部の話では、ムラジッチ被告は2002年までセルビア軍の軍人恩給を受け取っていた。第3の場所に支給された恩給を軍の協力者が受け取り、同被告に渡していたという。軍の保護を受ける同被告の待遇をカラジッチ被告はねたましく思っていた。

 カラジッチ被告は、欧州連合(EU)への統合を目指すセルビアのタディッチ大統領の指示で拘束された。だが、軍内部にはEU加盟を望む親欧派が少ないため、「ムラジッチ被告の拘束にはかなりの困難が予想される」と元幹部は指摘した。

 今回の拘束で中心的な役割を果たしたのは、これまでカラジッチ被告を見逃してきたセルビア秘密情報機関で、同被告と接触していたおいを長期間にわたって監視、電話の盗聴を続け、同被告の居場所を突き止めた。米欧の情報機関はセルビア当局に拘束を急ぐよう圧力をかけ続けていた。

 元幹部は「タディッチ大統領の政治的決断があったから拘束できた。セルビアが政治と経済の安定を達成するには、バルカン半島で起きたことを直視する必要がある。セルビア当局自らが、民族主義勢力に英雄視されているカラジッチ被告を拘束したことにこそ大きな意義がある」と語った。

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