6~8年後に打ち上げが予定されている静止気象衛星「ひまわり」の後継機について、気象庁が整備費の予算確保に苦しんでいる。予備機を合わせた2機で約800億円の整備・運用費が必要だが、現行の6、7号で半分以上を負担した国土交通省が今回は計画から外れ、民間の気象関連企業も費用の一部負担を拒否したためだ。31年も続く宇宙からの気象観測に空白ができてしまう恐れも懸念されている。
気象庁によると、ひまわりは故障に備えて2機体制で、6、7号は15年に寿命を迎える。衛星の製造には5年かかり、来年度に着手しなければならないため、整備費を来年度予算に盛り込み、今後8年間で毎年100億円近い予算を確保する必要がある。6、7号では、航空管制用の通信機を搭載することで旧運輸省航空局が予算の7割を負担したが、今回は「航空管制システムについて各国と議論中」として航空管制機能の相乗りをやめた。
気象庁の年間予算は人件費も含め約580億円。「人件費以外はほとんどがアメダスや地震計などの更新整備・維持費に充てられ、予算を捻出(ねんしゅつ)する余力はない」(同庁気象衛星課)のが現状だ。観測データを有料化し、民間の気象予報会社や衛星画像販売会社に費用の一部を負担してもらうよう計画したが、猛反発され断念した。
後継機がなくなると、台風の規模や進路のほか、低気圧や前線の動きも把握が困難になる。観測データはアジア各国などに送っているため、アジア・太平洋地域の約30カ国の防災にも支障を来たす恐れがある。
気象衛星課の横田寛伸課長補佐は「専門家の間でも『国民の視点から見れば税金の使い方として気象衛星は第一優先』との意見は共通している。コスト低減のため民間に衛星の運用を任せることも考えていく」と話している。【樋岡徹也】
毎日新聞 2008年7月31日 15時00分(最終更新 7月31日 15時00分)