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当直は過重労働−疲れ果てる小児科医(後)

 「小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会」(守月理会長)が行った小児科医の当直に関する調査では、最大で月8回、平均で5.7回に及んだ中原さんの労働環境について、同じ小児科医として「過重」と受け止める声が目立った。調査では、小児科医の当直を過酷なものにしている要因なども指摘されている。

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 当直業務では、救急患者がひっきりなしに来院する場合もあれば、深夜帯(午前零時−7時)に「空き時間」ができる場合もある。調査では、この「空き時間」に心身を休めることができるかどうかについても尋ねた。

 「一人で『夜の小児科を守る』ことは、精神的緊張を伴い、決して休めるものではない」(東京都・36歳)、「いつ急患が来るか、病棟の患者が急変しないか、神経が興奮した“臨戦態勢”」(同・40歳)など、当直を担っている時に心身を休めるのは難しいようだ。
 東京都の36歳の医師は、「実際の現場では、救急外来のみならず、(入院患者がいる)病棟勤務もこなさなければならない。ほかにも、書類記入、指示入力、検査結果確認などで断続的に仕事をしていることが多い。加えて、電話相談への対応にも時間を取られることが多く、体を横にして深く眠れる状態ではないため、かえって疲労が蓄積する」と窮状を訴えている。

 中原さんが勤めていた病院では、当直時の急患で重症の場合には「第三次救急病院」に転送することになっていた。調査では、重症患者を転送できれば、当直は過重ではないと言えるかどうかについても尋ねた。
 東京都の34歳の医師は、「全く言えない。理由は、来院するまで、患者が三次救急レベルかどうか分からないこと。また、来院してからの急変があること。少なくとも三次救急が必要かどうかの見極めが時間の経過とともに変化するため、油断できないから」と答えた。
 また、東京都の36歳の医師は、「転送を要する患者が急患の中にいるという状態そのものが非常に過酷」と指摘した上で、「その場で、でき得る限りの医療行為を施し、家族に説明をして、紹介先を探す。そして、搬送の手はずを整え、無事に搬送を終えるという作業は心身共にストレスになる。ましてや、急激に悪化する患者を診ながら、紹介先が見つからないこともしばしばあり、極度の緊張を伴う」と、当直自体が過重としている。

 このほか、調査では、小児科勤務に関する自由意見も求めた。
 滋賀県の48歳の医師は、「臨床現場では、常に複数の患者の状態が変化していく。救急車が連続して飛び込んでくる時もある。その中で、いつも『間違いのないベストの判断』を求められる。下した判断が『ベスト』でなければ、医師は司法で裁かれる。こういうストレスの下で、医師は仕事をしている。このストレスを医師以外の人にも理解してほしい」と訴え、中原さんが月平均5.7回の当直をしていたことについて「体調や精神のバランスを崩すことは必至」、最大で月8回に及んだことは「殺人的」と、医師の過重労働の見直しを強く求めた。
 また、大阪府の50歳の医師は、「書類上は、当直室で仮眠となっている時間帯も、何度も起きては病室を訪問し、ナースステーションに足を運んでいる。(回数だけでは測れない)精神的・肉体的な負担を強いられている。子供たちがいい医療を受けられるよう、小児科医が誇りを持って、いつも元気に働けるような労働条件を」と訴えている。

【三次救急】
 救急には、入院治療の必要がなく、外来で対処できる帰宅可能な患者に対応する「初期救急」、入院治療を必要とする重症患者に対応する「二次救急」、二次救急で対応できない高度な処置を必要とするケースや重篤な患者に対応する「三次救急」がある。


更新:2008/07/31 15:11   キャリアブレイン


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