■呼び出し~chapter#15~

バイト先でケータイが鳴った。
『誰だよ、このクソ忙しい時に。』
丁度出勤前の更衣室で着替えてる時で、しかめた顔してケータイを見た。
そしたら、ケータイに画面に出てる名前はアナタだった。
中途半端な着替えのまま急いでケータイに出た。
しかめていた顔も思わず緩んだ。

『おぅ。』
『どーしたの?電話なんて珍しい。』
ケータイを掛けながら半端な着替えを続けるアタシ。
『今から来いよ。』
お呼びである。
『行く!』って言いたいところだが、これからバイトで無理。
『えー今からバイトだから無理だよー。明日は?』
『今がいいの。んじゃ誰かお前の友達でこれから来れるヤツいないの?』
『今からなんて無理だよ。いないって。てか知らない人のとこに友達が行くわけないじゃん。』
大体、アナタに友達を預けたら何されるかわかんない。
それに他のオンナをアナタに会わせたくない。
『本心か?』
『はぁ???』
『お前、俺に他のオンナ紹介したくないんだろー。』
冗談っぽく言ったアナタ。
だけど図星である。
『んもぉ、とりあえず呼べるオンナいないから!』
内心ドキドキしながら答えた。
『そっか。お前バイトだしなー。んじゃいいわ!んじゃな!』
『うん。』

ほんの10分程度の会話だった。
こういう時に限って何でバイトあるんだよってすごく悔やんだ。
バイト休みたかった。
でもアタシのバイト先は厳しくて急に休む事は許されない。
溜息をついた瞬間だった。
ケータイがまた鳴る。
手に持ってたケータイを見る。
またアナタだった。
とりあえず急いで出る。

『もしもし?』
『お前さぁ、今日何時までバイト?』
『…8時半だけど?』
『終わってからでいいから来いよ。』
願ってもないことだった。
あの残念さがどこかへふっ飛んだ。
『いいよー。じゃ終わったら行くから。』
冷静さを保ち顔はにやけたままそう答えた。

バイトが終わるのが待ち遠しくてたまらなかった。
これから会えるって思うとバイト中に嫌なことがあっても平気だった。
いつもより時計を見る回数が増えた。
『あと少し…。』
時間が長く感じて仕方なかった。

突然の呼び出し。
嬉しい呼び出し。
アナタからの呼び出し。

早く会いたい。


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