DPCヒアリング、「指導監査の病院を」
DPC(入院費の包括払い)の不適切な請求方法などについて調べるため、厚生労働省は7月30日の「DPC評価分科会」(会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)で、2008年度の特別調査(ヒアリング)案を提示し、了承された。「再入院」や「アップコーディング」など不適切な診療報酬請求をしているDPC対象病院に対して実施するほか、高齢者らが長期入院するベッド(療養病床)を併設している「ケアミックス型病院」の運用状況も調べる。委員からは、「指導監査で明らかになった適切でない請求をしている病院、特に『包括評価されている項目の出来高請求』に該当する病院をヒアリング調査してほしい」と求める意見もあった。
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DPCめぐる議論、対立点は? 同分科会は昨年9月12日、再入院率が高い6病院の院長らを招集してヒアリング調査を実施した。今年度も同様に、DPCを導入している病院(DPC対象病院)から提出されたデータからDPCの運用に問題があると考えられる病院を選定し、秋ごろにヒアリング調査を実施する。
DPCは、入院期間が長くなるにつれて診療報酬が下がる仕組みになっているため、いったん退院させて在院日数を“リセット”させる「再入院」など、不適切な請求方法が問題になっていた。今年4月に算定ルールが見直され、「同一疾患による3日以内の再入院」を「1入院」として取り扱うことになった。
この影響を調査するため、今年度の調査では「3日以内の再入院率」が高い病院を対象にするほか、今後の算定ルール見直しに向け、「4−7日以内の再入院率」が高い病院も対象にする。
また、最も高い金額になるようにする「アップコーディング」などの不適切な請求方法の調査については、▽主な診断群分類について、一日当たりの包括範囲出来高点数の平均がDPC病院全体の平均より著しく高いか低い▽主な診断群分類について、平均在院日数がDPC病院全体の平均より著しく長いか短い▽正しく診断群分類が選択されていない―などに該当する病院を選定する。
このほか、今年度の調査では「ケアミックス型病院」を対象に加え、DPCの運用状況を調べる。当初、DPCは高度な医療を提供する「特定機能病院」を中心にスタートしたが、中小規模の病院も参加するようになったため、不適切な診療報酬請求が問題となっている。このため、DPC制度の目的の一つである「医療の標準化」が難しい状況にあり、その原因に「ケアミックス型病院」の存在が指摘されていることを考慮した。
質疑で、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)は、「指導監査で明らかになった適切でない請求をしている病院、特に『包括評価されている項目の出来高請求』に該当する病院をヒアリング調査してほしい」と求めた。厚労省は昨年8月8日の中医協基本問題小委員会で、不適切な請求について「指導」した事例を示している。
「監査」に移行した病院がなかったため、日本医師会の竹嶋康弘委員が「組織的ではないから監査まで移行しなかったと言うが、現在のような対応でよいのか。立ち入り再調査はしたのか、書面調査はどうか」と今後の対応を追及していた。
その際、厚労省保険局の宇都宮啓企画官は「不正請求について、どのように対応するかは次の議題として、議論していきたい」と述べている。
一部の関係者の間では「表に出ない不正なDPC請求は相当な額に上る」と指摘されており、厚労省の今後の対応が問われそうだ。
更新:2008/07/31 11:53 キャリアブレイン
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