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2008年7月31日

 金沢の辰巳用水の上流が洪水で一部埋まり復旧工事が進んでいる。この災害であらためて分かったのは、辰巳用水はお城を守っただけでなく農業用水としての側面も強かったことである

かつて金沢城に水を引いた用水の石管は富山県内産の石で造られた。伏木から積み出され能登半島を回って金沢に運んだと言われている。加賀と越中の土木技術と回船機能が連携して生まれた用水でもある

先ごろ辰巳用水上流で城郭と見間違えそうな三段状石垣が確認された。石垣と言えば戦国期の築城を思い浮かべるが、平和の続いた江戸中期以降には農業土木に技術が転用されていった。辰巳用水はそうした歴史の変遷を示す遺構でもある

いつの世も戦争と災害は様々なものを破壊してきた。が、壊されて黙っていないのが人間である。戦国の石垣技術が平和利用に転じたように、近代戦争の兵器から自動車や航空機など平和産業に転じたものは少なくない

復興と復旧は同じではないという。元に戻すだけが復旧。前以上に良くするのが復興。災害の急襲にめげず、より強固で住みやすい郷土作りに努力したい。


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