【ワシントン斉藤信宏】国際通貨基金(IMF)は29日、日本に対する年次審査報告書を発表し、日本経済の現状については「米国の景気減速や国際金融市場の混乱に対し、底堅さを示してきた」と評価した。食料やエネルギー価格の高騰、世界経済からの影響といったリスクを指摘しつつも「軟着陸が見込まれる」と景気の先行きについては楽観的な見通しを示し、08、09年とも実質成長率を1.5%前後と見込んだ。
特に、日本の金融システムが低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題による打撃を回避している点を高く評価しており、その一因として、日銀の柔軟な流動性管理を挙げた。また、円相場について「割安な水準にとどまっている」と指摘し、長期的に見ると一段の円高・ドル安傾向が望ましいとの見方を示した。報告は「日本の投資家による国際的な分散投資で生じる資本流出が、今後も円安方向への圧力になるかもしれない」と記して、国外の債券や株式への投資の動きが為替相場に与える影響についても指摘した。
一方、今後の課題としては「構造改革を再び活性化させることが必要」と指摘。労働市場の柔軟性や対内直接投資の促進、規制緩和を推進するように求めた。
毎日新聞 2008年7月30日 13時23分