ヤマダ電機が、9月末から最低価格9,980円の中古PCの販売を開始して話題を集めている。 これまで、OSを搭載していない中古PCでは、1万円前後の低価格中古PCも一部市場には出回っていたが、ヤマダ電機では、マイクロソフトとの契約によって、半年間の期間限定サポートながらも、新たにOSを搭載した形で、この価格帯で中古PCを販売しているのが特徴。なぜ、ヤマダ電機は、こうした中古PCを出荷することができるのだろうか。 ヤマダ電機が9月から出荷した低価格中古PCは、「ECOぱそ」と呼ばれる製品。これまでの中古PCと異なるのは、マイクロソフトが提供する「Japan Refurbished PC Program」という制度を利用している点だ。 これは、マイクロソフトと契約した一部の企業だけが利用できる制度で、マイクロソフトが指定した基準をクリアする生産拠点において、契約した会社が、中古PCに対して、新たにWindowsをインストールして出荷するもの。バックアップCDは添付されないが、販売から半年間に渡って、OSの保証がついた形で販売されることになる。 同様の仕組みは、「Microsoft Authorized Refurbisher」(MAR)プログラムとして、学校や地域に根ざしたNPOなどに寄贈する中古PCの再生制度として、全世界133カ国で実施されているが、今回の制度は、これを一般に流通する中古PCにも広げた格好だ。 マイクロソフトでは、2005年8月から日本市場向けに試験的に導入しており、現在、ヤマダ電機のほか、数社がこの契約を締結しているが、同制度を本格的に活用しているのはヤマダ電機だけといっていいだろう。
「これまでの同等性能の中古PCに比べても、約半分の価格となる。低価格でPCを手に入れたいというユーザーには最適な製品」と、ヤマダ電機IT事業本部PCリユース事業部・藤野豊次長は語る。 「ECOぱそ」として、製品が市場に送り出されるまでの仕組みを見てみよう。 ヤマダ電機は、全国200店舗を超える同社のPC取扱店で、大きく2種類の方法でPCの買い取りを行なっている。 1つは、査定表に則って、買い取りを行なうという、通常買い取りである。 基本的には、Windows Me以降の機種が対象となるが、「価格がつく」といえる形で買い取ってもらえるのは、やはりWindows XP搭載PCということになる。これらの多くにはWindows のバックアップCDやマニュアルなどが同梱された形で買い取りが行なわれるものが多いため、通常の中古PCとして再生され、流通されることになる。 一方、同社が用意しているもう1つの買い取り方法が「100円買い取り」である。 Windows 98以降のOSを搭載しているPCであれば、どんなに古いPCでも100円で買い取るというものだ。破損しているPCも、同様に100円で買い取る。 通常Windows 98を搭載した古いPCや、一部が破損しており、中古PCとして再生が不可能な製品は、買い取り価格はまったくつかない。 そのため、リサイクルマークがついていない製品については、3,000円〜4,000円のリサイクル費用を支払って、これを処分しなくてはならない。費用を支払ってまで処分するのであれば、ヤマダ電機に持ち込み、100円で売った方が、ユーザーにもメリットがあるという計算だ。
ヤマダ電機では、こうして買い取ったPCを、同社の子会社であるインバースネットで再生。そこで新たにWindows OSや、最低限必要とされるドライバをインストールをして、低価格中古PC「ECOぱそ」として再生する。 同社が、中古PCとして再生する際に、大きな威力を発揮するのが、全国の店舗から集められる買い取りPCの数の多さである。 100円という買い取り価格設定と、全国規模での買い取り窓口の広さという効果が重なり、買い取りPCの数は、月間2万点を超える。そのため、バラバラに買い取ったPCでも、同一機種として台数がまとまりやすい。そのため、OSや機種ごとに用意しなくてはならないドライバのインストールも、まとまった台数に対して一気に行なえるため、効率的な再生ができるのだ。 当然、破損したPCでも、回収するPCの数が多いため、部品の転用がきく。これも再生の効率化に大きなプラス効果を及ぼしている。 「実際には、入荷したPCのうち、再生が可能なPCは、約4分の1。今後は、この歩留まり率を高めていく努力も必要」とインバースネットの関戸光雄社長は語る。再生が不可能なPCは、使える部品をジャンク品ルートなどに流通させたり、同社が持つリサイクル施設を通じて、リサイクルするといった処理が行なわれる。 再生したPCは、搭載したCPU/OS/ドライブなどによって、製品ランクがAからFまで6段階に分けられる。 デスクトップの場合には、最下位のFランクが9,980円、Eランクが14,800円。そこから1ランクあがるごとに5,000円ずつ上乗せされ、最上位のAランクでも、34,800円。一方、ノートPCの場合は、Fクラスが19,800円から5,000円ずつ上昇し、Aランクが44,800円となる。 ちなみに、FランクのデスクトップPCでは、CPUがAMD K6-2あるいはCeleron 400MHz以上、HDDが10GB以下、メモリ64MB、OSはWindows 98 SE、そして、15型CRTディスプレイ付属といった仕様になる。 OS別に分類すると、一般的には、Eランク/FランクがWindows 98 SE、Cランク/DランクがWindows Me、Aランク/Bランクおよび一部Cランクの製品が、Windows XP搭載ということになる。 各ランクには、PCメーカー別や製品ブランド別の分類はなく、場合によっては、NECのPC本体に、富士通のディスプレイといった組み合わせで提供されることもある。 ECOぱそは、9月末の出荷開始以来、約2週間で500台程度を出荷。10月末までに約2,000台が出荷されることになる。今後は、月4,000台から5,000台程度にまで出荷を拡大する計画だ。
現在のところ、PC&マルチメディア館前橋本店、テックランド府中店、テックランド水戸店など全国9店舗の販売に留まっているが、11月初めには、全国約200店舗のヤマダ電機のPC取り扱い店舗で販売されることになる。 一部調査などによると、現在、PC利用者のうちの約3割が、友人、知人が利用していたPCを譲り受けたり、自ら中古PCを購入したりといったユーザーだという結果が出ている。また、その利用者のうち、約7割が次に購入するPCは新品でなくてもいい、と回答しているという。そうした意味で、中古PC市場の潜在需要は大きいともいえ、今回の低価格中古PCの投入によって、中古PC市場の裾野拡大につなげたいと、同社では語っている。 ヤマダ電機が仕掛けた低価格中古PCは、思わぬ台風の目になるかもしれない。
□ヤマダ電機のホームページ (2005年10月24日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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