文部科学省は29日、大分県の教員採用汚職事件を受けて全国64の都道府県・政令市教育委員会を対象に実施した一斉調査の結果を公表した。大分を含む64教委すべてが、今回の調査(10~25日が対象期間)では金銭授受などの不正行為は判明しなかったと回答した。同省は1カ月後をめどに再調査する。一方で、選考結果と筆記試験の答案などの元データを照合していない教委が27に上るなど、不正防止の仕組みづくりが不十分な実態が浮かんだ。
調査は47都道府県教委と17政令市教委が対象。不正防止策は全64教委が「(採点や集計など)段階ごとに複数者でチェックしている」と回答したが、「元データと選考後の確定データを照合している」と答えたのは37教委にとどまった。大分の事件では、選考結果と元データの照合がされていなかったため点数水増しなどをチェックできなかった。
採点者に受験者が分からないよう配慮をしているのは43教委。
また、選考事務担当者が受験者を特定できないよう整理番号で管理するなどしているのは17教委だった。不正防止策については、事件を機に29教委が見直し、32教委が「今後の改善を検討している」とした(重複回答あり)。
昨年度は44教委が選考基準を公表していなかったが、事件後も19教委が公表を決めていなかった。公表を決めている45教委でも、筆記試験▽面接▽実技試験▽論文▽模擬授業▽総合--のすべての判定基準を公表するのは福島、石川県など9教委だけ。試験や面接などの配点を公表するのは41教委だが、うち8教委は「情報公開請求があった場合のみ公表する」と答えた。また、42教委が選考基準公表に関して改善を検討するとした。一方、徳島県や横浜市など5教委は、事件を受けた具体的な改善策を検討していないと答えた。
さらに、昨年の採用選考で、地元議員などへ個別に合否を教えた教委は48あった。多くは「結果公表後」としているが、公表直前や、公表後でも合否通知の発送前もあった。
渡海紀三朗文科相は29日、各教委の対応について「すべてにおいて十分であるとは言えない」と述べ、1カ月後をめどに再調査することを明らかにした。【加藤隆寛】
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■教員採用試験の在り方調査結果■
《都道府県》
北海道 4
青森 0
岩手 1☆
宮城 1
秋田 1☆
山形 1☆
福島 6
茨城 2
栃木 0
群馬 0
埼玉 5
千葉 0
東京 0☆
神奈川 1
新潟 0
富山 0
石川 6
福井 1
山梨 0
長野 4
岐阜 6
静岡 5
愛知 4☆
三重 1
滋賀 4
京都 6
大阪 0
兵庫 1
奈良 0☆
和歌山 0
鳥取 1
島根 3
岡山 2
広島 0☆
山口 0☆
徳島 5
香川 6
愛媛 4
高知 6
福岡 0
佐賀 2☆
長崎 0
熊本 0
大分 1☆
宮崎 0
鹿児島 6
沖縄 4
《政令市》
札幌 4
仙台 1
さいたま 2
千葉 0
横浜 5☆
川崎 0
新潟 0
静岡 6
浜松 6
名古屋 5
京都 4☆
大阪 0
堺 0
神戸 1
広島 0☆
北九州 0
福岡 0
※選考基準公表の数字は(1)筆記試験の配点(2)面接の判定基準(3)実技試験の判定基準(4)論文・作文の判定基準(5)模擬授業の判定基準(6)総合判定基準--のうち公表している項目数。富山は公表内容未定。☆は上記6項目以外の公表をしている教委。
毎日新聞 2008年7月30日 東京朝刊