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政府(厚労省他)


DPC、「機能係数」の議論スタート

 病院の機能によって診療報酬に差を付ける「機能係数」をめぐる議論が、スタートした。DPC(入院費の包括払い)の在り方を検討する厚生労働省の会議で、松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)が、「医療者の配置」と「受け入れ患者の重症度」を機能係数に反映させることを提案したほか、「全患者数に対する全身麻酔の割合」「病理専門医の存在割合」などを示した。委員からは「全身麻酔を一つの係数にすると、局所麻酔でいいのに全身麻酔をする可能性がある」「ICUや病理医という切り口だけで見れば、DPC病院だけ特別扱いする根拠はない」など、さまざまな指摘が相次いだ。

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 中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織「DPC評価分科会」(会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)が7月30日に開かれ、松田委員の研究班がまとめた「病院機能係数の考え方」について意見交換した。

 松田委員は、機能係数を「固定費的な部分の評価」としながらも、その病院を利用する患者の一部が負担すべき費用は、「加算」で対応すべきとした。また、病院が地域で果たしている機能を「係数」で評価する必要性も示した。
 このため、機能係数で評価するのは「すべての患者が負担すべき費用」と「地域で必要な機能に掛かる費用」になる。

 松田委員はまた、「望ましい5基準の妥当性の検討」と題する資料を示した。「ICUの評価」では、医師や看護師の配置と受け入れ患者の重症度を機能係数に反映することを提案。このほか、「全患者数に対する全麻の割合」「病理専門医の存在割合」「全患者数に対する迅速検査の割合」を示した。
 さらに、病院が地域で果たす役割の評価について、「4疾病5事業の評価」を挙げたほか、「諸外国の例」として、教育・研修の費用に関するビクトリア州の例を示した。

 質疑で、齋藤壽一委員(社会保険中央総合病院長)は、DPCを導入していない出来高算定の病院との整合性の問題を指摘。「ICUや病理医は、既存の『特掲診療料』の中に盛り込まれており、出来高の施設基準として加算されている。確かに、DPC病院は高度な医療を提供しているが、ICUや病理医という切り口だけで見れば、DPC病院だけ特別扱いする(別計算にする)説得力ある根拠がないのではないか」と質問した。

 これに対し松田委員は、「特掲診療料」(基本診療料に含まれない治療行為の評価)を見直す必要性を指摘。「特掲診療料の設定に問題がある。例えば、重症度が高い患者を診ている場合、透析に回すなどいろいろな医療行為をするので、出来高換算だと加算を付けても赤字になる。とすると、ICUの特掲診療料を算定しているかどうかではなく、重症の患者を診ているかどうかを加味する必要がある」と答えたが、齋藤委員は「DPC以外の診療報酬体系との整合性がクリアされないと、納得できる機能係数を決めにくい」と返した。

 また、池上直己委員(慶應義塾大医学部教授)が、「望ましい5つの要件」を機能係数で評価することについて疑問を呈し、「ICUがある病院とない病院がある。外科系がある病院とない病院がある。従って、すべての病院に対する加算の指標としては適切ではない。また、全身麻酔が一つの係数になると、局所麻酔でいいのに全身麻酔をする可能性がある」と指摘した。
 「考え方」については、委員からさまざまな意見が相次いだ。このため、機能係数の具体的な内容は、今後引き続き審議する。

【機能係数】
 
病院の機能によって診療報酬に差を付ける「機能係数」をめぐっては、同分科会が昨年11月に取りまとめた「提案書」に一定の方向が示されており、中医協で既に承認されている。
 それによると、「DPC対象病院として満たすことが望ましい」とされている5つの要件(特定集中治療室管理料、救命救急入院料、病理診断料、麻酔診断料、画像診断管理加算)を機能係数にすることが示されている。

 また、「高度な医療を提供する病院」や「救急、産科、小児科などの不採算部門を抱える病院」を機能係数で評価する方向も示されている。具体的には、▽不採算部門(救急、産科、小児科など)の評価▽高度な医療提供体制(救急医療など)の評価▽高度な医療提供について地域の必要性を踏まえた評価―を挙げている。
 さらに、厚労省が7月16日の中医協で示した「DPCの在り方について」では、「地域における医療の必要性を踏まえた病院機能の役割を評価すること」が加わっており、地域医療に取り組む病院を機能係数で優遇する方針が示されている。

 前年度の収入を保証する「調整係数」を2008年度の診療報酬改定以降に廃止することが中医協で既に決定しており、それに伴って新たに機能係数が導入されることになっている。ただ、廃止の時期や経過措置、廃止に伴って新たに導入する係数(機能係数)の内容については、今後の議論に委ねられている。


更新:2008/07/30 19:45   キャリアブレイン


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