ミュージカル「エリザベート」
涼風真世、朝海ひかるのダブルキャスト 8月3日から28日 中日劇場
【社会】校内、生徒の目前で 教諭「待てよ、待てよ」2008年7月30日 朝刊
凶行に走ったのは、また、少年だった−。愛知県知立市の知立中学校で29日、卒業生が元担任をナイフで刺した事件。18歳の少年は、夏休みに入ったばかりの学校に侵入し、生徒の目前で、凶刃を突き立てた。同県岡崎市のバスジャックなど全国で、少年による重大事件が相次ぐ。「復讐(ふくしゅう)するつもりだった」。逮捕後、少年はこう話したというが、心に積もらせていた憎悪の闇は、見えてこない。 背中から血を流しながら「待てよ、待てよ」と犯人の少年をなだめる神谷佳久教諭。「怖い、怖い」と悲鳴を上げながら逃げ惑う吹奏楽部員ら。犯行現場となった技術棟2階の被服室は騒然となった。 犯行当時は、耐震工事で使えない校舎の音楽室の代わりに吹奏楽部が練習中。約50人の部員がいた。 その場にいた生徒たちによると、少年は被服室東側の入り口から侵入し、入り口を背にいすに座っていた神谷教諭を背中から無言で刺した。神谷教諭は楽器の台座に使われる金具などを少年の目の前に落としながら抵抗したという。 被服室の真ん中あたりにいた女子部員は、悲鳴を上げる他の部員とともに入り口付近を目指して、楽器の間をすり抜けながら部屋を出た。そこから、学校東側にある市役所内に逃げ込んだ。この時、少年は神谷教諭以外の部員たちに向かって、関係ない、というように手を振ったという。 神谷教諭と少年が室外へ出た後、被服室に残っていた部員も他の教諭の誘導で逃げた。少年は犯行後、技術棟の北東角あたりでしゃがみ込んでいたという。 女子部員は「逃げる時は犯人の横を通り過ぎた。怖かった。何でこんなことが起こるのか分からない。先生は元気になってほしい」と、こわばった表情で話した。 ◆少年、中2時も殴る「おとなしそうに見えたが…」「先生が刺されたと聞いて、やったのは、あいつじゃないかとすぐに思った」。事件後、知立中学校の正門前には少年の中学時代の同級生らが続々と集まり、不安そうに見入った。 多くの同級生が鮮明に記憶していたのは、中学2年の時の出来事。神谷佳久教諭が担当する国語の授業中、少年が突然、神谷教諭に殴りかかった。提出した宿題のプリントの字を「汚い」とクラスメートの前で注意されて激高したという。 少年は、体が細く自分からけんかをするようには見えず、勉強も運動も得意ではなかったという。同級生の男性会社員(18)は「普段から口数が少なく、友達も多くない。見た目は乱暴な感じではなかったが、キレると何をするか分からなかった」と話す。 中学卒業後、少年を見かけた人はほとんどいない。同じマンションに住み、小学校時代に子ども会などで一緒になった男子高校生(16)は「最後に見たのは2、3年前。何をしていたのか全然分からない」と話した。 生徒たちによると、刺された神谷教諭は明るく面白い先生で、熱血タイプ。一方で、3年前、当時中学2年の男子生徒に授業中、小型ナイフで刺されたことがある。教え子の男性(18)は「悪く言えば細かくて口うるさく、煙たく思う生徒もいたのでは」と語った。
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