局地的な集中豪雨に見舞われた神戸市の都賀川で28日、小学生らが濁流にのまれて亡くなった。水遊びを楽しめるよう整備された河川を前触れもなく鉄砲水が襲うという、予測を上回る状況で起きた事故だ。
気象庁などによると、1時間に50ミリ以上の雨が降った回数は、77年から86年の10年間で平均200回、87年から96年は230回を超え、97年から06年では300回以上にのぼる。地球規模の気候変動やヒートアイランド現象の影響とみられ、同様の事故は今後も起こり得る。改めて、異常気象への備えと市民の意識向上の必要性を痛感する。
神戸ではこの日、夏の日差しが照りつけていた。神戸海洋気象台は午後1時20分に大雨洪水注意報を、同55分に警報を出したが、雨はまだ強くなかった。
ところが、同2時40分からの10分間で1・3メートルも水位が急上昇した。神戸市が設置した監視カメラの映像では黒い水が津波のように押し寄せたのがわかる。六甲山や流域に降った雨が一気に流れ込んだのだ。
都市での豪雨被害の例としては、99年に福岡市のビル地下にある飲食店に川からあふれた大量の水が流れ込み従業員が水死。00年には名古屋の地下街や地下鉄駅が冠水した。
これを教訓に01年、水防法が改正され、地下鉄や地下街への浸水情報伝達を義務付けた。だが、河川そのものの対策は遅れている。
神戸市は市内22河川に監視カメラを設置しており、河川の状況を携帯電話でも見ることができる。だが、屋外でこうした情報を常時入手することは難しい。
管理する兵庫県は、98、99年に洪水を起こした新湊川に警報サイレンを設置したが、都賀川は98年にも増水して人が取り残される事故が起きていたのに、設置していなかった。
都市の河川を親水空間として整備するのは、憩いの場としても災害時に水を利用するうえでも、またヒートアイランド現象対策としても極めて有効だ。
しかし、突発的な増水の恐れがある以上、県や市は気象警報が出たら速やかに警戒を呼びかけるスピーカーやサイレンの整備を急ぐべきだ。パトロールを強化して事故防止に万全を尽くすのも当然の責務だ。
さらに、護岸を階段状にしたり、道路とつなぐスロープを増設するなど避難路を確保する必要がある。
コンクリートやアスファルトで地面を覆う街づくりも、再考すべきだろう。
まず、雨水の河川流入を減らすため、アスファルトを水を通しやすいものに替えることだ。遊水機能を備えた土・芝生のグラウンドや公園の整備も不可欠だ。
そして何より、市民自身が、突発災害はいつ起きてもおかしくないという認識を高めておくことが、再発防止には欠かせない。
毎日新聞 2008年7月30日 東京朝刊