「不正はない」。教員採用試験を巡って文部科学省が実施した調査に、64の都道府県・政令市教育委員会は口をそろえた。しかし教委によって調査の手法はまちまちで、十分なチェックをしていないところもある。「採用試験は公正なのか」との受験者の不安はぬぐいきれていない。
青森県は過去5年の採用試験に携わった全85人に聞き取り調査をした。一方、北九州市は昨年の試験にかかわった数人に事情を聴いただけ。札幌市は過去5年間にかかわった職員に尋ねたが、対象は課長以上だけだった。鹿児島県は、採用システムの点検をしただけで、採用試験に携わった職員への聞き取りをしなかった。
聞き取り調査で特定の受験生の合格を依頼する「働きかけ」が判明したところもあった。長野県は過去10年間の採用試験について、教育長から出先機関の指導主事まで191人に電話で尋ねた。うち幹部を中心に14人が「(県議ら)外部から直接働きかけを受けた」と答えた。しかし、不正はなかったという。
教員志望の学生の不信は尽きない。埼玉県の小学校教員を志望する私立大3年の男子学生(20)は、予備校で元教員の教師が「やっと(不正が)明るみに出た」と口にするのを聞き、「どこでも(口利きは)行われていたのか」と感じた。男子学生は「公平に試験を行ってほしい」と訴える。倍率約9倍の仙台市の小学校教員を目指す友人は「おれもコネがほしいよ」と皮肉交じりに嘆いているという。
大分県の教員採用試験を今年受験した同県の小学校臨時講師の男性(37)は「他県の仲間と話しても(大分の事件と)似たようなうわさは聞く」。27教委がデータ照合をしていなかったことについて「(チェックしては困る)何かがあったとしか思えない。あるいは、職務怠慢だったかのどちらかだ」と厳しく批判した。
毎日新聞 2008年7月30日 東京朝刊