国民の検察化東北大学名誉教授 小田中聴樹さん
裁判員制度の本質は5点。第1に、犯罪の処罰に国民を動員し国民を総警察・検察化する。第2に、被告の意見を聞く適切な手続きがなく、黙秘権や弁護権を抑圧する。第3に、裁判の焦点は公判前に整理され、公判を形式化する。第4に、秘密の壁を張り巡らし、検察の証拠開示は部分的、弁護人や救援者、研究者にも縛りをかける。第5に、公正な裁判を受ける権利を侵害する。
90年代の新自由主義政策のなかで出てきた制度。だまされないように。
家族を崩壊に家族問題評論家 池内ひろ美さん
離婚相談が増えて1万件を超えた。夫婦の間で秘密を持つと関係が壊れるが、夫婦の間で秘密を持てというのが裁判員制度。人を裁くのはしんどいから、ストレスを軽くしてやりたいと話を聞いてあげると、懲役6カ月以下か罰金50万円で前科者になってしまう。
若い娘さんが裁判員になって、強姦殺害の証拠写真を見せられたらどうなるか。心が傷つく。裁判員制度はストレスとトラウマを抱えさせ、家族や地域を崩壊させる。納得がいかない。
人格改造計画 弁護士 高山俊吉さん
新潟や栃木、大分の弁護士会が実施の延期を求める決議をあげた。弁護士も闘っている。なぜ制度を導入させてはいけないのか、しっかり胸に叩き込んでおきたい。 裁判員になって司法の勉強をして、世の中が良くなると思ったらとんでもない。最高裁のポスターに「昨日までのあなたが変わる」とある。「人格改造計画」なのだ。
この制度は統治能力を失い、国民が権力を信用しない時代の産物。労働者、夫婦、学生みんなが反対しないといけない。
〈解説〉
裁判員制度裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)は04年4月23日に成立。09年5月21日スタートが閣議決定された。
扱う事件は殺人、強盗、強姦など重大事件に限られ、裁判員は20歳以上の有権者から地方裁判所が事件ごとに選ぶ。やむを得ない事情以外の理由で拒否はできない。
評議は裁判官3人と裁判員6人で行い、証拠調べは裁判官が事前に決める。連日開廷し、最長1週間のスピード裁判。被告人の防御権や弁護人の弁護権が侵害され、報道規制が徹底される。
評決内容は夫婦間でも秘密を求め、洩らすと6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金。呼び出しを受けて出頭しなかったり、宣誓を拒否すると10万円以下の過料となる。
この制度は最高裁、法務省が主導し「司法の国民的基盤の確立」 「この国のかたちの再構築に関わる一連の諸改革の最後の要」と位置づけられ、小泉首相のもとで実現。日弁連も、「市民の司法参加」「陪審制の一里塚」とみて賛成した。
対象を重大事件としたのは「国民の関心が高く、社会的影響が大きい」ため。ワイドショーへの悪乗りだが、国民は制度を知るにつれ反発を強めている。「個人の尊重と幸福追求の保障」 (憲法13条)、「思想・良心の自由」 (同19条)、「裁判を受ける権利」(同32条)などに違反し、同制度は「憲法違反のデパート」と酷評されている。
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