昨年六月に大相撲の時津風部屋で序ノ口力士が急死した事件で、日本相撲協会は再発防止策などをまとめた報告書を、監督官庁の文部科学省に提出した。
文科省から昨年九月、再発防止策策定の指示を受け、協会理事や外部有識者らによる検討委員会が原案をつくった。ようやくまとまった報告書だが、事件から一年一カ月も経過したのは、角界の体質改善への道のりが険しいことを示しているといえよう。
報告書の柱は、暴力をなくすために、暴行に使われかねない竹刀や木の棒などをけいこ場から撤去するとしたことだ。抜き打ちを含めた相撲部屋の視察も実施する。
国技を担う力士の育成に厳しい練習は欠かせない。しつけのために、“愛のむち”を求める声もある。「制裁」と「指導」の線引きの難しさがあらためて浮き彫りになっている。しかし、暴力は決して認められない。竹刀などの撤去には「けいこ場の空気が緩む」といった反発もあるようだが、協会の暴力根絶に向けての決意の表れと受け止めたい。
協会役員への外部からの人材登用も報告書に盛り込まれた。閉鎖的とされる協会の運営の透明性や公正性を高めるために必要なことであり、文科省からも指導されていた。協会は当初、理事会で意見を述べることはできるが、議決に加わることはできない監事職のみ外部人材の登用を決めていた。しかし、最終的には議決権のある理事にも登用を広げることにした。
文科省の強い意向が働いたようだ。協会の北の湖理事長は、渡海紀三朗文科相から九月までに登用するよう指示を受けている。人選は開かれた協会への試金石となろう。
力士死亡事件をきっかけに、再発防止策について検討作業を進めているさなかの今年五月、間垣部屋と陸奥部屋での力士暴行問題が発覚した。特に協会の理事でもある間垣親方の暴行は、イメージ回復を目指す角界に衝撃を与えた。相撲人気は、親方を頂点にした各部屋がしのぎを削り、綱とりにかける力士たちの奮闘に支えられている。国技として伝えなければならない伝統と文化があることは言うまでもない。
暴力を許容するような土壌を一掃することが大切だ。力士出身者で占める協会のあり方も、今回の事件への対応で厳しく問われた。外国人力士が増え、国際化も進んでいる。開かれた国技として、相撲界はあらためて出直しを図らなければならない。体質改善に向けて着実な取り組みを望みたい。
「生涯学習に関する世論調査」の結果を内閣府が発表した。政府は生涯学習社会の構築を目指してきたが、調査結果は芳しくなかった。
調査は、全国の成人男女三千人を対象に五月から六月にかけて行われ、回収率は61・2%だった。この一年間に生涯学習を「したことがある」と答えた人は47・2%で、前回二〇〇五年五月調査の47・6%よりわずかに減った。「していない」は51・4%と半数を超えた。
生涯学習社会は、生涯にわたっていつでも自由に学べ、その成果が適切に評価されることを目標にしている。社会の成熟化や高齢化に伴い、心の豊かさや生きがいのための学習が求められるようになった。情報化をはじめ国際化など社会の急速な変化に対応するため、生涯学び続ける重要性も高まる。
国は一九九〇年に生涯学習振興法を制定し、普及に力を入れてきた。だが、伸び悩んでいる厳しい調査結果を深刻にとらえなければなるまい。
生涯学習をしていない理由は「仕事が忙しくて時間がない」が45・4%で最も多く、「家事が忙しくて時間がない」の18・9%が続いた。「きっかけがつかめない」も16・4%あった。
今後については「してみたいと思う」が70・5%に達した。してみたい理由は「興味があり、趣味を広げ豊かにするため」「健康・体力づくり」「他の人との親睦(しんぼく)を深めたり、友人を得る」の順となっている。
岡山県では、昨年全国生涯学習フェスティバル「まなびピア岡山2007」が開かれ、大会史上初めて全市町村が会場となりにぎわった。盛り上がりを継続するためにも、国や自治体は生涯学習に関する情報を分かりやすく提供するなど、一層の普及活動が必要だ。
(2008年7月29日掲載)