ホーム > きょうの時鐘


2008年7月30日

 がん診断、治療にはセカンドオピニオン(第2の意見)が大切、と教わったのは、おととい急逝した磨伊(まい)正義(まさよし)金大名誉教授からだった。医師の治療に不安を抱いた場合、別の専門家に意見を聞くことを指す

だが、実行をためらわせる空気が、まだ周囲にはある。実際、セカンドオピニオン外来を手掛けてきた磨伊さんの元にも、主治医に内緒で、病気のデータを持たずに相談に訪れる人が多かったという

「私が主治医なら」と、磨伊さんは言った。納得しないまま治療を受けている患者さんを抱えている方が、よほど落胆する、と。患者の信頼がなければ、腕の良い医師が治療しても不信感が広がっていく、と断じた

磨伊さんは「頑張って」「しっかり」という言葉を安易に使うのを、家族や周囲にもいさめた。病気との闘いに十二分に頑張っている人に、軽率な励ましは新たな重荷にしかならない。メスの腕と同様に、患者の心を重んじる治療を説いた

2人に1人ががん患者になるいまは、花形だった外科医の仕事が過酷であるとして敬遠される時代でもある。1人のがん外科医の足跡が、大きく映る。


ホームへ