最終更新: 2008/07/29 18:16

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沖縄本島北部地域をカバーしてきたドクターヘリが存続の危機に直面しています。

医師を乗せ現場に急行するドクターヘリ。
沖縄県では、財政の問題から導入に二の足を踏んできた行政の動きを待たずに、民間の病院がドクターヘリ事業を実施してきました。
しかし、沖縄本島北部地域をカバーしてきたヘリが存続の危機に直面しています。

南の楽園と言われる沖縄だが、楽園とは言いがたい厳しい現実があった。
およそ12万人が暮らす沖縄本島北部地域には、救急車での搬送に2時間以上を費やす医療過疎地が点在している。
2007年6月、この現実に立ち向かうため、民間の病院がドクターヘリ事業に乗り出した。
北部地区医師会病院の小濱正博ドクターは「端的に言えば1つ。救える命を救う、それだけです」と語った。
「山で作業をしていた方が、ほおを切って出血が止まらないという情報しか入っておりません」という緊急要請が入り、救急部リーダーの小濱ドクターが出動した。
ドクターとナースは直ちにヘリに飛び乗り、命の現場へ向かった。
事故現場は原生林の中で、作業中の男性(53)が、チェーンソーで顔面を切り裂いたという。
ヘリは出動から10分で現場付近に到着、初期治療を行って、直ちに搬送した。
救急車では1時間かかるところを、ヘリはわずか9分で戻ってきた。
男性は患部から大量出血していて、小濱ドクターは現場からずっと患部に手を当て、止血し続けてきた。
病院に搬送して緊急手術を開始。
2時間に及ぶ手術は成功した。
1カ月半後、24針縫った事故がうそのように、男性は回復していた。
事故にあった新垣辰美さんは「職場の人には、救命ヘリでなかったら、命なかったかもしれないということを聞きました。皆さんのおかげで、本当にありがたく思っています」と語った。
1年余りで219人の命を救ってきた救急ヘリ、通称「MESH(メッシュ)」は、これまで民間の病院が自主運航してきた。
しかし、年間8,000万円を超える経費をこれ以上負担することは困難だとして、7月15日、一時休止することを発表した。
小濱ドクターは「やむなきことなんですが、1カ月、運航を休止することにいたしました。将来的にこれで終わりではないんで、継続した運航が可能となるような基金作りに尽力したいと思います」と語った。
ドクターたちは、国内では初めてとなるNPO(民間非営利団体)法人での運航を目指すことを決めた。
救える命を見捨ててはならないと、ドクターたちが奔走している。
救急ヘリ運航最終日には、観光で沖縄を訪れた1歳8カ月の女の子がベッドから転落し、意識を失っているとして、ドクターが現場から女の子を搬送した。
適切な初期治療の結果、大事には至らず、女の子は無事退院した。
女の子の母親は「子どもに何かあったらって思うと、ドクターヘリでよかったなと思います」と話し、搬送された女の子の姉は「帰ったらおままごとしたい」と語った。
小濱ドクターは「1つの県の、沖縄の小さな1地域の問題ではなく、われわれと同じような悩みを持ってる地域が日本に散在している。そこで待ち続けている人たちのためにも、ここで断念することはできない」と話した。
ドクターが設立したNPO「MESHサポート」(ウェブサイトhttp://www.meshsupport.net/)では、1口1,000円からの寄付金を募り、9月からの運航再開を目指している。
「今、声を上げなければ医療過疎地に未来はない」という強い信念が、ドクターたちを突き動かしている。

(07/29 13:25 沖縄テレビ)


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