【7月29日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は28日、中国政府は北京五輪を口実に人権活動家の取り締まりを強化していると非難する報告書を発表した。
これによると、人権改善において多少の進展はみられたが、北京五輪で「安定と調和した社会」を演出したい中国当局は、むしろ人権活動家や弁護士に対する弾圧を強めているという。
アムネスティは世界の関心が中国から遠のく五輪終了後には、さらに弾圧が強まる恐れがあると警鐘を鳴らし、国際オリンピック委員会(International Olympic Committee、IOC) や各国首脳に対し、中国に対し人権改善の圧力を強めるよう求めた。
報告書は取り締まりの具体的事例を示し、中国当局による五輪前の「一掃作戦」で、五輪を機に自分たちの目的を達成しようと試みた多くの活動家が身柄を拘束されたり自宅軟禁下に置かれているとしている。また、身柄拘束の対象が政府への陳情者や行商人、物乞いにまで拡大していると非難している。
■「五輪を口実に規制を強化」
さらに報告書は、「中国当局は、北京五輪を口実に既存の規制を強化し、これが人権侵害につながっている」と指摘。「全ての政治犯の釈放」「警察の自由裁量による身柄拘束の禁止」「死刑執行の停止」「自由な報道の確保」「チベット(Tibet)自治区における拘束者数および騒乱での正確な死者数の把握」を中国政府に求めた。
アムネスティは、中国が1月に開始した「北京市のイメージを損ね社会秩序を乱す不法活動家」の取り締まりや、6月に上海(Shanghai)当局が行なった活動家や陳情団体らの週単位での活動報告の提出義務化や、無許可での市外移動や北京五輪期間中の北京訪問禁止を規制強化の具体例としてあげている。
このほか、中国の外国人記者クラブがまとめたインタビュー活動の妨害件数を提示。これによると、妨害件数は前年の180件に対し、今年はわずか半年で230件に上っており、記者らへの締め付けが厳しくなっていることが見て取れる。
また、インターネットでも取り締まりが強化され、当局が不適切とみなしたウェブサイトの多くが閉鎖された。
■五輪の自由な報道は守られるか
アムネスティによると、北京五輪のメーンプレスセンターでは、英国放送協会(BBC)、ドイツのドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)、香港の蘋果日報(Apple Daily)、台湾の自由時報(Liberty Times)などのウェブサイトへのアクセスが不可能だという。
こうした状況は北京五輪のために「完全な報道の自由を確保する」という中国政府の公式な約束に反するとして批判している。
中国当局は五輪報道の検閲は行わないとしているが、当局が不適切と判断した映像がカットされかねないとの懸念はぬぐいきれないのが現状だ。(c)AFP
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