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2000.10.31 作成
2008.7.16 更新

 「漁火」(いさりび)を考える 

 
◆誤った光とエネルギーの使い方…イカ漁業集魚灯の改善を!!

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4.改善への道

イカという生物の特性、また光の物理的特性に正しく目を向けることにより、
劇的な省エネルギー化・経費削減が可能です。

それは漁業経営や地域経済に大きなプラスになるばかりでなく、
北海道の夜空に、
無数の星々の輝きや夜空への憧れを取り戻すことにも
つながるのです。

下に紹介した行政機関からの返答では、「イカの光に対する反応は未解明」
また
「効率を向上させると乱獲を生じる」と説明されています。

しかし、イカがいない夜空に向けられた光に対する、イカの反応を問題に
しても仕方ありません。
資源保護や産業の振興は、産業の存続を危うくするほどの無駄な浪費
あるいは他船との潰しあいといった
過当競争、またそれらによる環境破壊
前提にするのではなく、
「光の物理的特性」「生物の光に対する反応」
について、
十分な科学的検討を行ったうえで、徹底した効率化と資源管理
よって行われるべきものではないでしょうか。


◆反射カバー等の設置によって、効率向上・光害低減をねらった集魚灯の例。(2008.7.16追加)

 ・マリンテック
  「いかのひかり」
 ※従来型集魚灯の反射板の工夫をはじめ、最近はLED集魚灯の開発に、積極的に取り組まれ
 ています。Webサイトには、実験の様子の写真等が豊富に掲載されています。

・ウシオライティング
 有指向性集魚灯
 ※大型の反射カバーを設置し、指向性をもたせ効率化したもの。海中での透過率も改善されて
 います。設置場所、配光等については、検討の余地がありそうです。

・仁光電機商会
 HIDパネル集魚灯
 ※自動車のライトと同様の、反射板、集光レンズを備えた小径のライトを、パネル状に多数
 配置することで、指向性を持たせ効率化したもの。
 パネル配置や配光等については、検討の余地がありそうです。

・香川大学地域開発共同研究センター・LED集魚灯(リンク切れ)
 ※LEDパネルを集魚灯として用い、消費電力は従来の1/10、また寿命は10倍ということです。
 集魚灯のLEDパネルは写真では横向きに設置されていますが、操業時には「斜め下」に向ける
 そうです。消費電力、寿命ばかりか、「光の向き」についても効率化がはかられています。

(LED集魚灯については、本ページ最下段をご覧下さい)

◆日本で開発され、海外で使用されているという水中集魚灯の例。

・拓洋理研

 水中集魚灯システムSWSY
 ※水中集魚灯システムの紹介。また船上集魚灯の非効率性がよくわかるイラストがあります。

 水中灯については、「光が強いとかえってイカが逃げる」という指摘もあり、それはまったく
 そのとおりでしょう。水中灯においても、「光と影の積極的なコントロール」を考える必要が
 あるはずです。

   

集魚灯の消費電力を、現在の1/3の60000Wにすることによって、
船1隻あたり、年間400万円程度の経費節減をはかることができるという
水産庁のレポート(リンク切れ)。

※船体や集魚灯の構造を見直し、海中を効率的に照らすことができるようにすれば、
年間4000万円くらい浮かせることができるかもしれません!?
 

 

 

     
   最近の道路照明の例 
  「フルカットオフ型街路灯」(左:北海道陸別町) (右:国道5号線「函館新道」七飯町)

   上面に反射傘をかぶせ、また光源を完全に傘の中に収めることで、
   上方光束や水平方向のグレア光を抑え、エネルギー利用を効率化しています。

   
水平から上方向に漏れる光は0%になっています。
   (傘の外観はデザインされているもので、この内部に放物面形状の反射板があります)



 

★人工衛星からみた日本近海のイカ漁集魚灯(7日間の合成画像)

人工衛星からの漁火(宇宙にイカはいない)

画像クリックで拡大します。
出典は
こちら


「人工衛星からイカ漁船の漁火を見ると、イカの分布がよくわかる」
という学術論文です。


5.北海道庁、水産庁と交わしたメール

・道庁へのメール

1.エネルギー効率の問題
2.環境的問題
3.教育的問題
4.問題解決のために

・道庁からの返信


・農林水産省へのメール

・水産庁からの返信




 北海道庁へのメール (2000.9.28)

日頃は道民の生活のために日々努力していただき、たいへん感謝しております。

津軽海峡および周辺海域におきましては、6月から翌年1月まで、イカ漁が行われており、
イカはこの地域にとって、なくてはならない漁業資源となっております。

しかしながら、このイカ漁の集魚灯利用には、現状におきまして、種々の問題があると
考えられます。


1.エネルギー効率の問題

海中の擬似針を照らすために、船の上から裸電球(ハロゲン)を点灯させていますが、
「照らす向き」についての配慮がないために、光の大半は、「横」の空間、および「空」を
照らしているようです。

イカは海を泳ぐものであって、空を泳いでいるものではありません。横や空を照らす光は、
漁獲向上に何ら寄与しないばかりか、単なる燃料の無駄使いとなっています。

イカ漁においては、発電機に用いる燃油代が経費の大半をしめており、このような光やエネ
ルギーの使い方を放置することは、産業界や地域経済にとっても、大きなマイナス要因に
なっていると考えられます。


2.環境的問題

1)渡り鳥について
多くの野鳥は、夏冬で生息地を変える「渡り」をしています。函館山や白神岬は、渡り鳥の
休息場所・中継地点としても重要な場所です。
夜間に渡りをする鳥は、星の位置を目印として飛行しています。しかしながら、強烈な「漁火」
が空を照らすことにより、空は白ばみ、星の光は相対的に、非常に弱くなっています。

渡りの重要なルートである津軽海峡がこのような状態ですと、渡り鳥の生態に、大きな影響を
及ぼしている可能性があります。

2)天体観測について
不要な光が、不必要に空等を照らすことを、「光害」(ひかりがい)と呼び、天体観測の
大きな妨げになっています。

渡島半島は大都市もなく、重化学工業地帯ももちませんが、イカ漁のために、ほぼ全域に
おいて夜空は「光害」で満たされており、天の川を観察することも困難になっています。
星座の写真撮影を行っても、わずかな露出時間でも、背景が青緑色に濁ってしまいます。

※光害については、環境庁が平成10年に「光害対策ガイドライン」を策定し、改善を求めて
います。

3)CO2排出について
効率の悪いエネルギー利用による、無駄なCO2の排出を放置することは、地球温暖化防止の
ためにCO2排出量の削減が求められている国際的動向にも逆行するものです。

また温暖化が進行すれば、重要な漁業資源であるイカの生態にも影響が出ることが考えられ
ます。

3.教育的問題

イカ漁の集魚灯は、「いさりび」として、海峡風景のひとつの風物詩とされています。
しかしながら、その実態は知恵のないエネルギー資源の浪費、無用な環境破壊であり、現代
社会において、決して誇ることのできる風景ではありません。いわば七色の工場排液を観賞
しているようなものです。
この状況を放置し、あるいは観光として重宝することが、子供の健全な精神発育をさまたげる
要因になっていると考えられます。

また、子供の学力低下や理科離れが問題とされていますが、小規模な環境破壊の積み重なりに
よって、生きた教材が身近に存在しないのですから、当然の結果であると考えられます。
現状のイカ漁は、渡島半島の子供たちから「星空」を奪い、科学への興味や探究心、想像力を
減少させる要因になっています。


4.問題解決のために

1)短期的対策
上空や横の空間に、集魚灯から余計な直接光を漏らしていることが大きな問題です。集魚灯に
有効な「反射傘」を備えるよう、イカ漁の光量規制を改正することを提案いたします。

一般に、適切な反斜傘を用いることによって、照明効率は40%程度改善されるとされています。
また環境的・教育的効果を考えるならば、反射傘の採用によって、漁業者や社会が得られるも
のは、わずかな設備投資とは比較になりません。

2)長期的対策
水深100m前後を泳ぐイカを採るために、船上から強烈なライトを照らすのは、海水による減衰
や光の拡散を考慮するならば、まったく非効率なことです。使用エネルギーのいったい何%が、
漁獲に寄与しているのでしょうか。

擬似針を光らせるための集魚灯であれば、針のそばで発光させる、あるいは擬似針そのものに
発光機能を持たせることが必須であると思われます。

より知恵のある有効な漁具漁法の開発を、政策的に推進されることを提案いたします。




 
北海道庁からの返信 (2000.10.19)

このたびは、「提案の広場」にメールをお寄せいただきありがとうございました。

ご提言のございました「いか釣り漁業の集魚灯」につきまして、担当部局から報告を受けました
ので、北海道の広報広聴事務を担当している私から、お返事させていただきます。

集魚灯については長い研究の歴史があり、それはいか釣り漁業の技術展開の歴史を反映したものと
言う事ができます。

特に第2次世界大戦後に沿岸漁船の動力化が進む中で、集魚灯用の電球の普及に拍車がかかり、
現在に至っております。

北海道における道内いか釣り漁船の光力規制については、過剰投資の抑制等を理由に道独自の
基準(小型いか釣りで150kw以内)で平成5年度から実施しておりましたが、全国的には
光力の引上げ競争が激化し、道内外漁船の設備格差や過剰投資の面で問題が生じてきたことから、
水産庁や関係団体等が平成5年から小型いか釣り光力適正化検討調査を行い、平成8年度から
全国の統一規制として小型いか釣り漁船の集魚灯の光力の上限を180kw以内とする集魚灯設備
技術基準を「全国いかつり漁業連絡協議会」において決定しております。

これを踏まえ、本道においても道内漁船への影響を考慮し、平成8年度から光力同数値で規制して
いるところです。

今回、光量規制等についてのご提言をいただきましたが、現在のところ、いかの生態や光に対する
反応(水深・海底の影響・季節別)等については、未解明なことが多いことから、今後、ご提言の
趣旨を参考としまして効率的な漁具漁法の開発などについて関係団体と協議してまいりたいと考え
ておりますので、ご理解とご協力をお願いいたします。

平成12年10月18日

北海道総合企画部政策室




 農林水産省へのメール (2001.3.23)

イカ釣り漁業の集魚灯利用について

 沿岸のイカ釣り漁船におきましては、船一隻あたり180000Wという膨大な電力消費をともなう
集魚灯の使用が行われております。これは、国道に設置される新型街路灯1000本ぶんの消費電力に
相当し、また1回の出漁で約400P使用する燃油の、2/3が発電のために消費されています。

 このように膨大な経費とエネルギーを用いて集魚灯を点灯させているにもかかわらず、集魚灯は
甲板上にぶら下げられた裸電球であり、その光のほとんどは、イカの泳ぐ海ではなく、上方の空及
び船の甲板、そして沿岸の山ばかりを照らしているのが現実です。海面に届く光は、発電量の10%と
もいわれています。

 これほど無駄なことを続けている産業も、現代日本においては、はなはだ珍しいのではないかと
思われます。

 このように、きわめて非効率なエネルギー利用による、無駄な費用負担は、漁業経営に大きな負担
を与えています。また環境面から見れば、このような不適切な集魚灯の利用形態は、日本海沿岸にお
いては、いわゆる「光害」の最大の元凶になっており、人々のうえの星空を、無意味に消し去ってい
ます(「光害対策」については、環境省が98年にガイドライン策定ずみ)。
 そして、きわめて無駄の大きいエネルギー利用は、CO2の排出削減に向けての国際的動向にも逆行
するものです。

1)集魚灯の取り付け位置を舷側に移し、また有効に作用する反射傘等を設ける等、集魚灯の効率化
をはかることはできないでしょうか。海を泳ぐイカを捕るために、空や山や甲板ばかり照らしていて
も仕方ありません。
※不可能な場合、その具体的理由についてもお知らせください。

2)海中100m前後を泳ぐイカを捕るために、海面から集魚灯を照らすのは、海面による反射、海中
での散乱を考えるならば、やはり無駄が大きいと思われます。水中式の集魚灯に転換することとは
できないのでしょうか。
※不可能な場合、その具体的理由についてもお知らせください。

 お手数おかけいたしますが、ご返信をよろしくお願いいたします。


 水産庁からの返信 (2001.12.27)

 平成13年12月27日
         水産庁資源管理部沿岸沖合課

いか釣り漁船集魚灯の改善について(回答)

 我が国周辺水域において、集団で操業しているいかつり漁船の集魚灯は、スペースシャトルからも
都市の灯のように確認できるとして話題になったこともあります。
 御指摘のとおり、現在、30トン未満のいかつり漁船は、エネルギーの効率的使用及び光力競争に
よる過剰設備を防止する観点から、平成8年に180kwの集魚灯使用制限を業者団体が自主規制措置
として決定してます。当該漁船に対し国としては一律の制限を課していませんが、漁業調整上の理由か
ら関係自治体の一部では漁業調整規則又は海区漁業調整委員会指示により、同様の制限を課している場
合があります。
 ここに至るまでは、漁業者間での議論の積み重ねで時間を要しましたし、自主的に決められた当初は
措置が守られていなかったが、最近はかなり遵守されているという状況でありました。

 また、水中集魚灯の使用については、いか釣り漁船間でも、他の漁業種類との間でも効率的になりす
ぎることやいか以外の魚種も集魚されるなどから関係漁業者の反発が大きく、使用についての合意形成
が出来にくい状況にあります。
 一方、御指摘の手法(水中集魚灯の使用)によりどのくらいの効果が得られるかについて、各方面に
意見を聞いてみたところ、まだ、科学的な知見が少ないとの意見も有りました。

 しかしながら、漁家経営の改善、地球温暖化防止、エネルギーの効率的使用の観点から御指摘は、今
後の漁業の在り方について検討が必要な事項と考えます。

 今後、以上のような観点から、科学的知見を収集し検討を進めるとともに御指摘の趣旨を関係団体に
も伝え関係者間の論議を積み重ねていきたいと考えます。


 


 
漁火のない時期の函館郊外の夜空(4月 海峡に面した丘の上より)


6.最新の動き(2006.10.2)

水産庁はじめ各研究機関が、イカ釣り用集魚灯の「LED化」に向けて
積極的に動いています。
『LED集魚灯』については、下記の各資料を御覧下さい。


【報道記事】
●週刊水産新聞(2005年10月17日)--写真あり ※リンク切れ

●読売新聞(2005年7月6日)--写真あり  ※リンク切れ

【水産庁】 
●新技術(システム)導入漁船像の提案(PDF)
 漁船の効率化についての提言
  

●7回漁船漁業構造改革推進会議速記録(2005年11月2日)

【研究紹介】

●青色発光ダイオード集魚灯の 技術開発について --「イカ釣り漁業が変わる!」(PDF)
 マリノフォーラム21 LED集魚灯開発事業検討会
 従来型集魚灯の、無駄の構造について図解あり

●最先端のイカの科学(PDF)
 北海道大学 大学院 水産学研究院 桜井泰憲教授

●北海道大学 北方圏フィールド科学センター 生態系変動解析分野

●マリンネット北海道
 道立水産試験研究機関、 水産技術普及指導所の情報公開ページ


【LED集魚灯の課題】

(2007/9/20 追加)
●アストロアーツ社
の天文雑誌『星ナビ』2006年12月号に、
LED集魚灯の動向と、残された課題についてのレポート記事「津軽海峡に星空は戻るのか」を執筆した。


(2008/6/23追加)
●長崎県漁連漁連だより 2007年10月号(PDF)
LED集魚灯の問題と、それにかわるHIDパネル、光ファイバーケーブルを用いた効率化の
取り組みが紹介されている。



【昼のイカ漁へ】
(2008/6/23追加)

●日高のさかなたちNo.13 スルメイカ(北海道日高支庁)
夜間操業から日中の操業へと転換した日高沖のイカ漁について簡単に紹介。

●eHAKO『函館新聞』記事「原油高騰で昼にイカ漁」(2007/9.1)


  
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集会場BBSになにか書く



漁火と光害に関する小リンク集

烏賊の王様(イカに関する総合情報)

漁業技術を考える(うさぎさんの卒論サイト/リンク切れ)

「光害」の解説 (岩崎電気)

環境省・光害対策ガイドライン(H10)
環境省・光害対策ガイドライン(H19改訂)

環境省・光害防止ガイドブック(H13)

行政窓口

農水省に意見だす

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http://mirai00.hp.infoseek.co.jp/ika1.html