2000.10.31 作成
2008.7.16 更新
「漁火」(いさりび)を考える
◆誤った光とエネルギーの使い方…イカ漁業集魚灯の改善を!!
更新情報
2008/6/23 2ページ目最下段に、注目されている『LED集魚灯』の課題ほかに関するリンクを追加しました。
2006/10/2 2ページ目最下段に、注目されている『LED集魚灯』に関するリンクを追加しました。
2007/9/20 2ページ目最下段に、『LED集魚灯』に関するレポート記事を紹介しました。

木地挽山キャンプ場からみた津軽海峡の漁火
(大野町公式サイトより)
1.空や山を照らす漁火
私たちの住む函館など北海道の南西部では、イカ釣漁業の「漁火」によって、
連日夜空が明るく照らされています。
しかしながら、イカは海中深くを泳いでいる生き物です。
空や山をいくら明るく照らしても、漁獲に何ら寄与するものでははありません。
「空」や「山」を照らすエネルギー消費は、まったくの「無駄づかい」ですし、
大幅な経費増大をもたらし、産業的にも大きなマイナスになっているのでは
ないでしょうか。
2.道南の夜空
◆漁火による夜空への悪影響
津軽海峡から北に50km、日本海から東に30kmほど離れた、森町濁川地区の夜空を、
ほぼ同じ条件で撮影してみました。南の空、「わし座」付近の天の川の様子です。

1)イカ漁休漁日の道南の星空(月に数度)
暗い背景に、濃い天の川が横切っているのを、はっきりと見ることができます。
これが「道南本来」の、美しい夜空の風景です。

2)イカ釣り操業日の道南の星空 (操業期間:6月〜翌年1月 休漁日を除く毎日)
天の川は何とか見えますが、月もないのに、空全体が薄明のように
青白く光っています。星の数も1/3程度でしょうか。
地面も空から薄明るく照らされ、何とも異様な光景です。
漁火の影響は海岸のみにとどまらず、操業海域から山脈をこえ遠く離れても、
大きく残っていることがわかります。
道南地域一帯の星空は、「漁火光害」によって、無為に、大きく損なわれています。
イカ漁を行っていく以上、この「漁火光害」は避けられないものなのでしょうか。
否、空をいくらまぶしく照らしても、釣るべきイカは、そこには1匹たりとも
泳いではいません。
道南の夜空の明るさ、すなわち「漁火光害」は、重大な産業的問題のあらわれです。
3.無為な光害発生・浪費の構造

一般的なイカ釣り漁船の構造です。
甲板の「上」に、集魚灯がズラリと吊り下げられています。
メタルハライド灯という、水銀灯に改良を加えた高出力ランプが用いられ、
1隻あたり180000Wが「上限」とされています。
最近の国道街路照明は、フルカットオフ型1本180Wですから、イカ釣り漁
船1隻あたり、街路灯1000本ぶんの電力を消費していることになります。
この電力は、すべて船上の発電機によってまかなわれています。

集魚灯のアップです。
いわゆる「裸電球」で、光の方向性に対する配慮はほぼ皆無。
このような構造では、集魚灯の光の大半は「空」または「横」に逃げ、
イカが泳ぐ海の中を効率的に照らすことはできません。
また、集魚灯の下には「甲板」がありますから、せっかくの「下向き」の
光も、その大半はただ「甲板」を照らすだけ。
1隻のイカ釣り漁船は、1晩の出漁で約400Pの燃料を消費しますが、その
約2/3は集魚灯を光らせる発電機のために費やされています。
このように多くの燃料・費用をかけて漁火を灯しても、その光の大部分は
漁に役立つことなく、ただ無駄に周囲の環境に放出されているのが実情です。
街路灯1000本ぶんに相当する光を放つ強烈な漁火も、
実際に海面に届くのはその10%程度にすぎず、
イカがいる水深50〜300mという漁獲深度に届くのは、
海面に届いた光の、さらに0.001%ほどにすぎません。
現状の「漁火」を用いたイカ釣り漁業は、きわめてエネルギー効率が悪く、
燃料と経費の多大な浪費とともに、多量の二酸化炭素を発生し、
同時に非常に広範かつ重度の「光害」を生じさせています。

七飯町の「丘のうえの小さな写真館」からいただいた「漁火」の写真です。
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http://mirai00.hp.infoseek.co.jp/ika1.html